令和3年司法試験行政法再現答案

令和3年司法試験行政法の再現答案を上げておきます。

これでC評価でした。

 

設問1小問(1)

1.行政事件訴訟法3条1項の抗告訴訟の対象となるためには行政庁の公権力の行使に関する作用であると認められなければならない。この公権力の行使に当たるというためには、法律に基づき、私人の権利義務又は法律上の地位を一方的に変更させる作用であると認められなければならない。

 本件不選定決定は本件条例26条1項に基づくものであり、これによって、屋台営業許可の候補者としての地位が与えられるものであるといえる。しかし、道路法32条1項の道路占有許可を行うためには道路法32条に基づいて申請すればよく、この申請を行う地位について限定はないため、本件条例26条によって、法律上の地位が与えられたということはできない。また、確かに、本件条例8条は市道占有許可について定めているものの、これは道路占有許可の許可基準であり、本件条例26条の屋台営業候補者の選定もこの許可基準の一部に過ぎない。

 そのため、本件条例26条に基づく本件不選定決定について処分性が認められない。

2.したがって、本件不選定決定は行政事件訴訟法3条1項の公権力の行使に関する作用であるとは認められず、取消訴訟の対象とすることができない。

設問1小問(2)

1.行政事件訴訟法9条1項によれば、取消訴訟の訴えの利益が認められるためには、法律上の利益を有することが認められなければならない。競願者訴訟の場合、どちらか一方が許可されれば、もう一方は当然に不許可となるため、東京12チャンネル事件はもう一方に許可処分がされていることを理由として訴えの利益が消滅するとは判断していない。

 しかし、本件事案におけるBへの本件不選定決定は20区画についてのものであることから、多数の者が応募していると考えられ、BとCは競願関係にないと考えられる。

2.そのため、東京12チャンネルと異なり、訴えの利益は消滅しているといえる。

設問2

1.本件条例26条1項による屋台営業候補者に選定されるためには、同条2項により屋台営業候補者として適当と認められなければならないとされる。また、屋台営業候補者として適当であるかどうかということはまちづくりなどの専門的な観点から政策的に決まるため、要件裁量が認められる。そのため、本件不選定決定が違法であるといえるためには裁量権の範囲を逸脱し社会通念上相当とされる判断を行わなかったと認められなければならない。

(1)A市はBが他人名義営業を行っていたことを理由に本件不選定決定を行っているものの、他人名義営業を行ったかどうかということは本件条例13条の問題であり、市道占有許可に関するものであることから、考慮することができない事由であるということができる。

 そのため、A市は前提となる事実を誤り社会通念上相当とされる範囲を逸脱して本件不選定決定を行ったということができるため、A市の本件不選定決定にはA市に認められた裁量権の範囲を逸脱した違法があるということができる。

(2)A市はBさんの総合成績が本件区画で2位であるため本件選定不許可処分を行ったと主張しているものの、Bさんは本件条例28条により設立される屋台専門委員会で屋台営業候補者として選定されている。そのため、昭和50年判例が指摘するように本来諮問機関である屋台専門委員会の推薦に従って許可決定を行うのが相当であるにもかかわらず、この事情を不当に軽視し本件選定不許可処分を行ったということができる。

 そのため、A市は考慮すべき事項を不当に軽視し、本来すべき処分を行わず、社会通念上相当とされる範囲を逸脱した処分を行ったため、本件不選定決定は違法であるということができる。

2.したがって、本件不選定決定は本件条例26条1項上認められた裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるため、Bの主張通り取り消すことができる。