平成30年司法試験予備試験行政法

平成30年司法試験予備試験行政法を解いていきます。

 

行政法 第6版

行政法 第6版

 

 

 設問1

 1.行政事件訴訟法3条1項の抗告訴訟を行うためには、行政庁の作用に処分性が認められなければならない。処分性が認められるためには、法律に基づいて相手方の権利義務又は法律上の地位について一方的に変更をもたらす作用であると認められなければならない。

(1)Xは条例48条に基づく勧告について、処分性が認められると主張している。確かに本件勧告は条例48条に基づくものではあるものの、勧告それ自体から何らかの法的効果が発生するものではないことから、条例48条に基づく勧告は相手方の権利義務又は法律上の地位を変更させるものとは言えない。

 しかし、条例49条によれば、勧告を受けた場合、意見陳述の機会が付与されることから、意見陳述の機会についての権利が与えられることとなるため、権利義務又は法律上の地位が付与されるということも言える。

 さらに、この効果は一方的に与えられることから権力性も認められる。

 したがって、Xは本件勧告に対して抗告訴訟を提起することができると主張することが考えられる。

(2)本件公表は条例50条に基づくものである。そのため、法律に基づく作用であることが認められる。

 確かに、公表というものは事実行為であるものの、条例25条各号の不適正な取引を行う事業者についての情報を公開するものであることから、制裁的公表ということができ公表されることによって、不適正な取引を行う事業者として認定される地位に置かれる。したがって、条例50条に基づく本件公表は法律上の地位について変動をもたらす作用であるということができる。

 さらに、この公表というものは、知事の判断によって一方的に行われることから、権力性も認められる。

 したがって、本件公表について処分性が認められる。

設問2

1.Y県はXの行為が条例25条4号に該当することを理由として本件勧告を行っているものの、XはYの判断に当てはめの誤りがあると主張することが考えられる。

 条例25条4号によれば、消費者を威迫して困惑させる方法で、消費者に迷惑を覚えさせるような方法で、又は消費者を心理的に不安な状態若しくは正常な判断ができない状態に陥らせる方法で契約を締結させたということが言えなければならない。

 本件事案において(ア)、(イ)のような発言をXの従業員の一部が行っているものの、(イ)の発言というものはだれかを不安にさせるものでもなく、単に同情を誘い購入を促すものであることから、条例25条4号の事由に当たらない。さらに、(ア)の発言というものも事実を述べたにすぎないため、条例25条4号の事由に当たらないといえる。

 したがって、当てはめの誤りを主張することができる。

2.次にY県は条例25条4号に当たることを理由として条例50条に基づく公表を行っているものの、このYの行為には裁量権の範囲を逸脱した違法があると主張することが認められる。

(1)条例25条4号によれば、消費者を威迫して困惑させる方法で、消費者に迷惑を覚えさせるような方法で、又は消費者を心理的に不安な状態若しくは正常な判断ができない状態の陥らせる方法でと諸事情を総合考慮して不適切であるかどうか判断するような規定となっているため、Yの判断には要件裁量が認められると解されると主張することが考えられる。この条例25条は制裁のための規定であることから、明確な規定であり、要件裁量は認められないとの主張も考えられるが、上記のように総合考慮しなければならないことから要件裁量が認められる。

 そのため、Xの行為が一部従業員による軽微な違法であるため、この事情を見落として勧告すべきとしたYの判断には裁量の逸脱があるとして条例25条4号の事由に当たらないことを主張することができる。

(2)また、条例48条による勧告は違反の是正を行うために指導することもできたことから効果裁量が認められると主張することが考えられる。

 確かに、条例48条の指導と勧告はどちらも事実行為であるため、重さに違いはないものの、そもそも事業者で解決する場合にはどちらも行わないことが考えらえる。このように、Yが諸事情を総合的に判断し勧告等を行うものであることから、条例48条の勧告には要件裁量が認められる。

 本件事案において、YはXが従業員に対して指導を行ったという事情を無視して勧告を行っていることから、重要な事実を見落として社会通念上相当とされない判断を行いYに認められた裁量権の範囲を逸脱した勧告を行ったということが認められる。

(3)このように、XはYの裁量逸脱のあったことを主張することができる。