杉本裕明著『ルポ にっぽんのごみ』を読みました

杉本裕明著『ルポ にっぽんのごみ』(岩波新書)を読みました。

廃棄物処理法や環境法に関心があったため読んでみました。

 

 この本は、「ごみの行方」をテーマに筆者が取材した結果をもとに、不法投棄問題や、廃棄物行政の過程、問題点を記した本です。

 まず、この本を読んでみて興味深かったのは、ただリサイクルボックスにごみを分別して入れればゴミを再利用できるのではないということです。例えば、プラスチックごみというものは、容器包装リサイクル法でリサイクルすることが法律上求められており、プラスチックをプラスチックに戻したり、プラスチック製品に作り替えたりする技術もあるのですが、回収し処理する費用に多額の金がかかる一方、リサイクルして製品化しても製品の販売代金が回収費用を下回り赤字になるため、リサイクルが進んでいないということが書かれています。そのため、世田谷区や岡山市ではプラスチックを分別回収せず、燃えるごみと一緒にそのまま燃やしているそうです。

 リサイクルによる環境保護を考えるうえで、経済効率がネックとなっているというのは残念ですが、持続可能な再製品化を考えるならば、この事情を無視してはならないのだと考えさせられました。

 また、リサイクル法制をめぐっては企業と官庁との対立があると考えさせられました。例えば、電子レンジやテレビといった小型家電については、小型家電リサイクル法という法律によって国が認定した事業者が引き取りレアメタルを回収するという決まりにはなっているのですが、一方で、不要になった小型家電を回収する中古品販売業者というものもいます。そのため、官庁は中古品販売業者に廃棄物処理法の回収許可を得るように求めたり、小型家電リサイクル法の法改正により中古小型家電について、中古家電販売会社が中古家電を海外に輸出しないよう定める法改正を必要ないにもかかわらず行い、中古家電回収業者の妨げになるような内容にしたり、法改正の際に中古品販売業者の意見を聞かずに法改正を行おうとしたという歴史が書かれています。

 こういう法改正の時はいつもそうなのですが、関係者であるにもかかわらず法改正の席につかせてくれないということがあるようです。そうなると、関係者であるはずの人たちにとって著しく不利な内容の法律が成立するということが起こってしまいます。法改正があるときは、当事者はどのような利益を主張しているのか、このような変な動きに注意しながら法改正の過程を見守らなければならないのではないかと考えさせられました。

 また、この本の内容は、有斐閣ストゥディアの環境法のゴミに関する項目を深堀するために役立つのではないかと思いました。というのも、環境保護と経済活動の自由の対立やリサイクル法制についての現実というものが書かれていたためです。この本は環境法を学ぶ足掛かりや環境法を学んだあとの深堀に役立つのではないでしょうか。