小川真如著『日本のコメ問題』を読みました

小川真如著『日本のコメ問題』(中公新書)を読みました。

農地に関して法規制などがどうなっているか興味があって読み始めました。

 

この本は、日本の「コメ問題」について、以下のように述べています。

現在のコメ問題はコメそのものをめぐる問題ではなく、田んぼをめぐる問題にとって代わっている。

11頁

 そのため、この本は、コメ問題について、食料自給率の観点からではなく、田んぼの問題の観点から日本のコメ問題をとらえる本になっています。

 食料自給率に注目しないというのは、この本によれば、日本のコメの自給というものは、1968年にすでに実現されていることから、以後の歴史はコメ余りの問題に向き合ってきた歴史と考えているためです。

 この本では、コメ問題の大まかな流れとして、「太平洋戦争直後日本人は食糧不足に陥り、コメの生産量を増やすように増やすようにしていた。その問題は、戦後12年ほどで達成され、以後コメが余っていき減反政策である『水田利用再編対策』が決定され、コメ余りの問題の解消にかじを切った。そして、貿易自由化によりコメの価値が下がり、水田を利用する農家が減り、水田が余る状態になっていった」ということが書かれています。

 ただ、この本を読んで、「日本のコメ問題」とは果たして何だろうかと思いました。というのも、この本によれば、日本はコメ不足により食糧不足に陥ることはないだろうと考えており、「日本のコメ問題」というものはずっと食糧不足に関するものではないからです。しかし。農地の担い手が失われるという問題なのか、農地を耕作する者が居なくなって、土地が利用されないままになるという問題なのかということは読んでいてはっきりしません。ただ、農地が利用されないままになっているのはもったいないし不経済であるということを問題にしているように思えます。

 これからの農地活用、農地を利用した経済の活性化のためにはどうすればよいか考えていかなければならない問題であることは考えさせられました。

 あと、この本を読んで非常に興味深かったのは、減反政策というものは法律に基づいて行われていないということです。減反政策というのは『水田利用政変対策』により行われ、コメの生産を控えた農家に補助金を配るという形でコメ作りをやめるインセンティブを与え、生産をやめない農家に対しては農家たちの相互監視でやめなければ地域から良い目で見られないというペナルティでコメ余りを解消させるということをしているためです。法に基づかずとも、人を動かすというのはアーキテクチャとか法のデザインなどが注目されるのですが、ここにも似たものがあるということが分かりました。