司法試験平成29年知的財産法第二問を解きました。
制限時間内に解くことができなかったので、後半部分が雑になっています。
解答筋や、答案の書き方等気になった点があれば、コメントにお願いします。
第二問
設問1
1.乙は丙に対し、演奏権侵害を理由として、著作権法112条に基づき丙のコンサートの差し止めを求めようとしているが、可能であるか検討する。
(1)演奏権侵害を行ったといえるためには、①依拠性が認められることと、②類似性が認められることと、③著作権法22条に規定される行為を行ったといえなければならない。
(2)本件事案において、丙は本件コンサートにおいて、乙の作曲した曲の歌唱を行おうとしていたのであるから、乙の著作物に対する依拠性、類似性が認められる。
(3)著作権法22条によれば、演奏権侵害といえるためには、公衆に聞かせることを目的として、演奏を行ったといえなければならないが、この「公衆」とは不特定又は多数人に対する行為を指す。
本件事案において、丙は本件コンサートにおいて、乙の曲を歌うことにより市の職員という不特定の者に対して演奏している。よって丙は著作権法22条にいう演奏を行ったということができる。
2.これに対して、丙は著作権法38条の著作権の制限を抗弁として主張することが考えられる。
(1)著作権法38条1項によれば、①非営利かつ、②無料の場合は非営利利用として著作権の制限を主張することができるとされているが、この無料とは、著作物の対価を受けないことを指す。
(2)本件事案における丙のコンサートは市内の福祉施設への寄付を目的とする非営利目的であり、さらに、本件コンサートの主催者は対価を得ておらず、寄付を集める募金も、コンサートの対価とするものではなかったことから、無料のものであったといえる。
3.したがって乙は丙に対して、本件コンサートの差し止めを請求することができない。
設問2
1.乙は丁に対して、本件記事を配信したことで、乙の自動公衆送信可能化権を侵害したことを理由として、著作権法112条1項に基づき本件動画の差止を行おうとしているが可能であるか検討する。
(1)著作権法112条に基づき差止を行うためには、①依拠性、②類似性、③著作権法23条1項の行為を行ったことが認められなければならない。
(2)丁の本件動画に含まれる内容は、Mが乙の本件CDに含まれる曲を歌う様子であるため、乙の曲に依拠していること、類似のものであることは認められるから、依拠性、類似性は認められる。
(3)次に著作権法23条1項の自動公衆送信可能化とは著作権法2条1項9号の4、9号の5によれば、公衆からの求めに応じて自動的に直接受信させることを可能にすることを指す。
本件事案において、丁は本件動画をインターネットにアップロードしているため、自動公衆送信可能化を行ったということができる。
(4)よって乙は、丁に対して著作権法112条の差止請求を主張することができる。
2.これに対して、丁は著作権法41条の事由に該当し、乙は差し止め請求権を行使できないことを主張すると考えられる。
著作権法41条は、複製を対象とするものであることから、自動公衆送信可能化について、著作権の制限を主張することができない。
3.よって、乙は丁に対して、本件動画の差し止めを請求することができる。
設問3
甲は乙に対して、著作権法20条1項の同一性保持権侵害、著作権法27条の翻案権侵害を理由として、著作権法112条に基づき差し止め、民法709条に基づき損害賠償請求を行おうとしているが、可能であるか検討する。
本件事案において、乙はQ章の収載順とは異なるように収録していることから、翻案権侵害、同一性保持権侵害が認められる。
そのため、甲は乙に対して差し止めと損害賠償を求めることができる。
設問4
1.乙は戊に対して著作権法113条6項の著作者人格権の侵害があったことを主張し、著作権法112条1項に基づいて差し止め請求を行うことが考えられる。
著作権法113条によれば、名誉声望を害する形での著作物の利用を行った場合には、著作者人格権の侵害があったことになるとされる。
本件事案において、戊は戦争をちゃかした喜劇の背景音楽としてMを用いているが、Mはもともと戦争の悲惨さをうたったものであり、このように戦争をちゃかす態様での著作物の利用は望んでいない。そのため、作曲者乙の声望を害する形での利用があったといえる。
2.したがって乙は戊に対して著作権法112条1項に基づいて差し止め請求権を行使することができる。