平成23年司法試験民事訴訟法

平成23年司法試験民事訴訟法を解いていきます

 

 

 設問1

1.私的自治の原則の手続き面への適用として弁論主義の第二テーゼとして、自白の拘束力が認められている。このように自白の拘束力が認められているのは、当事者は権利を自由に処分することができるためであるからであるとされている。

 ただし、あらゆる主張について自白の拘束力を認めると、裁判官の自由心証主義を害することになるため、自白の拘束力が認められるのは、主要事実に限られる。

 自白とは口頭弁論期日においてなされる相手方と主張の一致する不利益な事実の承認のことを指す。本件事案において、CはAの主張する甲土地の所有の事実を認めているが、この事実はAのCに対する所有権に基づく移転登記請求訴訟を基礎づける具体的事実であるため、主要事実であるということができる。また、この事実を認めると、Cは移転登記義務を負う可能性があるため不利益であるということができる。

 そのため、本件事案における③の事実について自白の拘束力が発生するといえる。

2.したがって、Cは権利自白の撤回をすることができない。

設問2

1.独立当事者参加

(1)民事訴訟法47条1項によれば、独立当事者参加を行うためには、訴訟の結果によって権利が害されること認められるか、訴訟の目的の全部もしくは一部が自己の権利である場合に訴訟参加をすることができるとされている。

 本件事案において、甲土地の所有権名義をAに与えるため訴訟に参加しようとしているが、この所有権名義をAに与えることは、Fの権利ではないので権利主張参加はできない。

(2)したがって、Fは民事訴訟法47条1項によって権利主張参加をすることはできない。

2.共同訴訟参加

(1)民事訴訟法52条1項によれば、訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合でなければならないとされる。

 本件事案において、FはAに甲土地の所有権の登記名義を得させるために共同訴訟参加を行おうとしているが、このような場合Fの債権者代位に基づく請求もBの債権者代位に基づく請求も両立しえるため合一確定の必要がない。そのため、民事訴訟法52条1項の要件を満たさない。

(2)したがって、Fの共同訴訟参加は認められない。

設問3

1.民事訴訟法124条1項1号によれば、当事者の死亡があった場合相続人は当然承継がされると規定されている。しかし、共同相続された場合については規定がないものの、共同訴訟になると解される。

 共同訴訟となった場合、証拠共通の原則により証拠による事実認定については統一的になされるものの、民事訴訟法39条によれば、共同相続人の一人の訴訟行為は他の共同相続人に影響を与えないとされている。

 民事訴訟法266条1項に基づく請求の認諾とは相手方の請求を全部認める判決を被告求める訴訟行為を指し、請求の放棄とは原告が請求の棄却する判決を求める訴訟行為を指す。そのため、民事訴訟法39条によってもう一人の共同訴訟人に対して効力が生じない。

 そのため、本件事案においてMはNの丙建物収去及び乙土地明け渡し請求を認諾し、Kの乙土地所有権確認の訴えについて請求棄却を求めているため、MについてはMは丙建物収去乙土地明け渡し義務を負い、Mは乙土地の持分権を有していないことが確定する。しかし、この効果はLに及ばないため、裁判所はLに対しては異なった判決をすることができる。

 しかし、Mが建物収去義務を負い、Lが建物収去義務を負わないことになった場合、矛盾した法律関係が発生することから、共同相続人において共同訴訟となると判断することは適切でない。そのため、このような場合、固有必要的共同訴訟となると解すべきである。

 そうすることにより、判決の矛盾抵触という状態は回避される。そのため、本件については共同相続により固有必要的共同訴訟になったと解して、LMの建物収去乙土地明け渡し義務は認められない又はLMの建物収去乙土地明け渡し義務が認められると合一的に判断されるべきである。

 以上