スポーツ法まとめメモ(8)

スポーツ固有法などのスポーツ組織内の法律について書いていきます。

主に検討するのは、代表選考、懲戒処分、アンチドーピングです。

 

標準テキスト スポーツ法学 第3版

標準テキスト スポーツ法学 第3版

  • 発売日: 2020/05/07
  • メディア: 単行本
 

 

 概説

  スポーツ団体内部のルールの法源は三つある。一つは、スポーツ団体内の民主的な意思決定であり、二つ目はスポーツ団体の利害関係人との関係であり、三つめは、裁判やスポーツ仲裁の判例である。

 スポーツ団体の基本原理は三つある。一つ目はスポーツ基本法5条に規定されるスポーツ団体の義務であり、二つ目は行政機関類似の組織構造であり、三つめはガバナンス原則である。

 そのため、スポーツ団体では、基本計画や法令順守、人材育成・確保、多様な資金源の確保などの運営全般にかかわるルール、スポーツ団体の会議自体に関する運営ルール、さらには事務局運営にかかわるルール、会計処理に関するルールまで定められている。

 

代表選考

 代表選考とは国際大会に出場する者、強化指定選手として指定される者、国民体育大会へ出場する者を選手の競技成績などから競技団体内のルールに従って選出することである。

 代表選考の目的は、国際競技力の向上が第一であり、次に代表選考に関するトラブルの防止の考慮である。この代表選考の際に選出のための公平性と透明性を確保する必要がある。公平性・透明性を確保するために、代表選考基準の公表を行ったり、国内ポイントシステムを用意している(自動車運転免許停止処分の際の点数のようなものと考えるとよい)。

 

懲戒処分

 スポーツ団体の運営のために、不祥事を発生させたものに対して団体独自の内部規則に則って制裁措置として懲戒処分を行うことがある(似たものとして、学校での生徒指導を思い浮かべるとよい、それか、職場での懲戒解雇などと似たものだと考えてもよい)。

 この懲戒処分についてはスポーツ団体内部で認められた権限であることから、一定の裁量が認められる。

 しかし、スポーツ団体が全く自由に懲戒処分を下してよいとすると、不合理な理由・内容の処分が下されかねない。そのため、①事実認定に誤りがあり、重要な事実の基礎を欠く場合や、②重視すべき事項を重視しなかったり、重視すべきでない事項を重視して社会通念上相当性を欠くような判断をした場合にはその懲戒処分は取り消されるものと考えられる(行政裁量や懲戒権の濫用の法理と同じく)。また、懲戒の際、適正な手続きに則って行われる必要がある。

 

アンチ・ドーピング

 ドーピングとは、選手が運動能力を高めるために不正に薬物を用いることを指す。

 このようにドーピングが禁止されるのは、フェアプレーの精神に反すること、社会に悪影響を及ぼすこと、スポーツ固有の価値を失わせることが理由である。これについて、世界アンチドーピング機構(通称「WADA」)は、スポーツ固有の価値の保護を目的としているとWADAの規定上宣言している。

 ドーピング違反の効果は、①個人成績の自動失効、②資格停止措置、③金銭的制裁である。

 ドーピングが実際に行われ、そのために制裁を科すためには適正手続きに則ってお壊れなければならない。そのため、適正な方法と、WADAなどの機関による裁定と仲裁機関への上訴がある。