事例演習刑事訴訟法 事例5
一罪一逮捕一勾留の原則に関する問題です。
1.刑事訴訟法205条1項に基づき勾留を行う場合、刑事訴訟法208条1項の勾留期間の厳格な定めの潜脱となってはならないことから、一罪一逮捕一勾留の原則があるとされ、同じ罪について重ねて逮捕勾留することはできないとされている。この一罪であるか否かということは実体法上一罪といえる関係にあるかによって判断される。また、この際、同時処理可能性が考慮される。
本件事案において、XのA事実とB事実はどちらも常習傷害の事実に関するものであり、包括一罪の関係にある。また、B事実はA事実の前に発生したのであるから、A事実について逮捕勾留した際B事実についても逮捕勾留できたのであるから、同時処理可能性があるといえる。そのため、XをA事実について逮捕勾留し保釈しているというXのA事実についての勾留段階にあっては、A事実と包括一罪の関係にあり、同時処理可能性のあったB事実を理由として重ねて逮捕勾留することはできない。
したがって、捜査機関はXをB事実によって逮捕勾留することはできない。
2.刑事訴訟法205条1項に基づき交流を行う場合、刑事訴訟法208条1項の勾留期間の厳格な定めの潜脱となってはならないことから、一罪一逮捕一勾留の原則があるとされる。子の一罪に当たるか否かは実体法上の一罪に当たるか否か、同時処理可能性があるか否かによって判断するとされる。
本件事案において、XのA事実とC事実はどちらも常習傷害罪として包括一罪の関係にあるのであるが、A事実について逮捕勾留した時点でC事実は発生していないのであるから、同時処理可能性がないといえる。そのため、A事実とC事実は同一の犯罪でないということができ、一罪一逮捕一勾留の原則に反しないといえる。
したがって捜査機関はC事実によってXを逮捕勾留することができる。