平成22年司法試験行政法

司法試験行政法平成22年を解いていきます。

 上手く解けなかったので時間を計って解いていません。「 行政法ガール」で負け確イベントみたいな風に書かれていたのも納得です。

何か気になる点がありましたらコメントにお願いします。

 

 設問1

1.地方自治法242条の2第1項4号によれば、地方自治体の職員が違法行為を行っていることを理由として地方自治体の損害賠償請求権を住民が代位して請求することができるとされている。

 地方自治法242条の2第1項4号に基づいて損害賠償請求を行うためには、地方自治法242条に基づく住民監査請求を行い、監査委員の監査の結果に不服があると認められなければならない。

(1)本件事案において、BとCは住民監査請求を行っており、住民監査請求の結果B及びCの請求には理由がないと判断している。そのため、B及びCは住民監査請求を行った者であり、さらに、監査委員の監査の結果について、公正を欠き違法であるため損害賠償請求を行うべきであると主張していたにもかかわらずその主張が認められていないことから、不服があるということができる。

 したがって、B及びCは適法に訴えを提起することができる。

(2)一方、Dは住民監査請求を行っていないにもかかわらず住民訴訟を行おうとしている。

 地方自治法242条の2には原告適格に関する規定はないものの、住民監査請求を行った者にしか原告適格は認められないと考えられるため、Dは適法に住民訴訟を提起することができない。

2.よって、B及びCは適法に訴えを提起することができるものの、Dは適法に訴えを提起することができない。

設問2

1.Bらは本件土地の売買契約について、財産の処分について破格の安値で売却された不当なものであることと、このような財産の処分について必要な村の議決を書くことと、選定方法について村関係者の便宜を図るものであるため、公正を欠くことを理由として地方自治法234条に違反すると主張している。しかし、このようなBらの主張には理由がないと考えられる。

 地方自治法234条1項は地方自治体の売買契約については一般入札競争や指名入札競争などといった方法で売却しなければならないと規定されているが、このように規定されているのは、売買の目的物についてなるだけ高値で売却することを確保し財政の健全化を図るためであるとされる。

(1)地方自治法234条2項によれば、指名入札競争、随意契約、せり売りを行うためには地方自治法施行令の要件を満たさなければならないとされる。本件事案において、本件土地の一区画の価格を決めずに購入希望者と直接相談することによって本件土地の売却を行っているため、A村のとった売却方法は、随意契約であると性質決定される。そのため、地方自治法234条2項の委任する地方自治法施行令167条の2第1項の要件を満たさなければならないと考えられる。

 地方自治法施行令167条の2第1項によれば、同項各号に掲げられた事由がある場合に随意契約によって契約を締約することができるとされる。本件事案における本件土地は相場並みの価格で売却を試みたものの、1区画について応募があったのみでさらにこの1区画の売買も契約が成立しなかったことから、地方自治法施行令167条の2第1項9号の落札者が契約を締約しない場合に当たるということができる。したがって、随意契約によって売買契約を締約したことについて違法はない。

 よって、下限が設定されなかったことについての違法はない。

(2)地方自治法96条1項6号、237条2項によれば、財産の譲渡が行われる場合においてその対価が適正でない場合、議会の議決を必要としている。しかし、行政財産の売却は行政庁の財政事情や、市場価格などを総合考慮して決定するものであることから、価格の決定について行政裁量が認められる。そのため、行政庁に認められた裁量の範囲を逸脱した社会通念上相当とされないと考えられる場合に適正な価格と認められる。

 確かに、本件事案において、本件土地の価格は8000万円が適正であり、この価格を下回っており、また、村の関係者によって購入されたため、公正な価格より低い価格で売却されたのではないかと考えられる。しかし、前年に相場価格で本件土地を売却しようとしたところ購入者が現れず、購入者と交渉することにより、公正な価格より下回ったものの、双方が合意できる価格によって売却したという事情もある。また、本件土地の売却は、村の財政が厳しい段階において行われたものであることから、低い価格であっても売却する必要性があったものと考えられる。

 そのため、A村に認められた裁量権の範囲を逸脱しているということはできず、地方自治法96条1項6号、237条2項にいう適正な価格でないということはできない。

 よって、議会の議決を得なかったB村の措置に地方自治法96条1項6号、237条2項違反はない。

(3)したがって、A村の契約締結は適法なものということができる。

設問3

小問(1)

 二つの判例は、損害賠償請求権を放棄する合理的な理由がある場合に損害賠償請求権を放棄することは適法であると一般論を示しているものの、適法とする判例は、地方自治体の自治権を重視し、合理的な議決があれば、地方自治体の損害賠償請求権の放棄を適法とする一方、違法とする判例は、地方自治法住民訴訟の規定は違法な財務会計上の行為を放置し、損害の回復を求めるものであるため、この趣旨を考慮し、地方自治体の自治権をがあるとしても、合理的な理由がないと判断している。

 小問(2)

1.そのため、適法とする判例のような観点に立つとA村がEに対する損害賠償請求権を放棄するためには合理的な理由がなければならないとされる。本件事案において、請求権を放棄しようとしているのは、Eに損害賠償責任を負わせるのは気の毒であり、A村の議員も同様に考えていることから、損害賠償請求権を放棄することを決定したものといえることから、請求権放棄を行うことに合理性があると考えられる。

 一方違法とする判例のような観点に立つと、地方自治法住民訴訟の規定のある趣旨を考慮に入れるべきとされるものの、損害賠償請求権を放棄する合理的な理由がなければならないとされる。本件事案において、A村が損害賠償請求権を放棄しようとしているのはBらの提起した住民訴訟を無意味にさせるものであることから合理的な理由のないものと考えらえる。

2.これらの判例を考慮に入れると、地方自治体が住民訴訟で認められた損害賠償請求権を放棄するためには、合理的な理由がなければならないものの、この際、住民訴訟によって、地方自治体の財政の健全化が図られているという観点を考慮しなければならない。

 本件事案において、確かにA村の議会の議員によって賛成多数でEに対する損害賠償請求権は放棄されているため、放棄されたことについて理由はあるものの、本件土地をその相場価格を考慮することなく売却することによって3200万円という重大な損失が生じているうえ、ただでさえひっ迫しているA村の財政を損害賠償請求権の放棄によってさらにひっ迫させることになるため、Bらが損害馬用請求を行った者を無意味にさせるようなA村の議決には合理的な理由はないものと考えられる。

 したがって、A村の議決によるEに対する損害賠償請求権の放棄は違法なものと考えられる。