ロープラクティス民事訴訟法 基本問題8

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題8を解いていきます。

 この問題は将来給付の訴えに関する問題です。司法試験に出たということもあって復習がてら解いてみます。

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.③の口頭弁論終結時から将来の被害がやむ時までに生ずる精神的・身体的被害を理由とする損害賠償請求については、将来権利が発生するものであることから、将来給付の訴えとして性質決定される。

 民事訴訟法135条によれば、将来給付の訴えを提起するためには、あらかじめその請求をする必要がある場合に提起することができるとされる。しかし、必要性を理由として安易に将来給付の訴えを認めるとなると、被告が長期的な応訴の煩を強いられることになることから、損害賠償請求の基礎となる事情が存在し、損害の発生が継続することが予想され、被告にとって有利な事情を予測することができ、その被告にとって有利な事情を主張させても被告にとって不利益とならないことが認められなければならない。

 本件事案において、YがXの自宅の隣地に室外機を設置し、稼働させることによって騒音を発生させ続けているため、現在損害賠償請求の基礎となる事情が存在しているということができる。また、室外機を設置し続ける限り、将来も損害が発生し、XのYに対する損害賠償請求権の継続的な発生は予測することができる。また、有利な事情として、防音壁を設置するなどして損害額が減少したことや室外機を除去したことなどを主張できると考えられることから、被告にとって有利な事情を予測することはできると考えられる。

 しかし、Yが損害の減少措置として、防音壁を設置したり、騒音の発生しない室外機を設置することにより損害の減少を図ることが考えられるとしても、これらの事情をのちに請求意義の訴えによって主張しなければならず、被告にとって不利益を強いられ続けることになる。

 そのため、XのYに対する将来の被害を理由とする将来給付の訴えは認められない。

2.仮に③請求が認められた場合、Xは被害が発生するたびに債権の執行を求めることになると考えられる。これに対して、YはXから債権の執行を受けるたびに異議事由として損害額が減少したことを主張しなければならず、証明できなかった場合に当初の通りの損害額を支払わなければならないという不利益が発生する。

以上