ロープラクティス民事訴訟法 基本問題9

ロープラクティス民事訴訟法基本問題9を解いていきます。

この問題は確認の訴えの確認の利益に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.裁判所に持ち込まれる紛争を限定するために確認訴訟として訴えの利益が認められるのは、現在、法的紛争が発生しており、紛争解決のために既判力によって確認することが必要であり、これによって、当事者間の紛争が直接解決することが認められなければならない。

 この訴えの利益は対象選択の適切性、方法選択の適切性、紛争の成熟性の観点から判断される。

 本件事案において、X1とYとの間で遺産相続に関する紛争が発生しており、その相続の対象となっているのは別紙目録記載の不動産であることから、複数の不動産が対象となっていると考えられる。

 そのため、これらの不動産の返還を給付訴訟によって求めると多数の訴えを提起しなければならなくなり煩雑であることから、遺言の有効性を現在確認しておく方が方法選択、対象選択の観点から適切であると考えられる。

 また、Aが死亡したことによりX1とYとの間で紛争が発生していることから紛争解決の必要性が存在しているということができる。

 したがって、X1のYに対する遺言無効確認訴訟について訴えの利益が認められる。

2.仮に裁判所がX1の訴えを適法と認めたうえで請求を棄却した場合、X2が遺言無効確認訴訟を提起することができるかが問題となるが、その前提として、遺言無効確認訴訟が固有必要的共同訴訟に該当するか検討する。

 民事訴訟法40条1項によれば、固有必要的共同訴訟は共同訴訟人全員について合一にのみ確定すべき場合に認められると規定されているため、固有必要的共同訴訟を提起するためには、訴訟共同の必要性と合一確定の必要性が認められなければならない。

 遺言無効確認訴訟については、相続人の一人と他の相続人の一人との間で遺言が無効であると確認したとしても、遺産関係が複雑になるのみであり、紛争解決に資さないことから、合一確定の必要性があるということができる。また、その様に合一に確定しなければならないことから、訴訟共同の必要性もあるということができる。

 したがって、遺言無効確認訴訟は固有必要的共同訴訟であるということができる。そのため、X2も民事訴訟法115条1項1号にいう当事者であるということができ、X1の訴えの既判力が及ぶことになる。

 そのため、X2の訴えは既判力によって遮断される。

以上