ロープラクティス商法問題24

ロープラクティス商法の問題24を解いていきます。

私が使っているのはロープラクティス商法[第三版]ですので問題が違うかもしれません。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.会社法831条1項1号によれば、株主総会決議の決議の方法が法令に違反している場合株主総会決議の取り消しを請求することができるとされている。

(1)会社法314条によれば、株主総会において、取締役らには説明義務があるとされる。

 本件事案において、Dは退職慰労金の支出に関する議決の際にXから退職慰労金の額について質問されたにもかかわらず、回答していない。退職慰労金の額については取締役の報酬と同様に会社法361条に基づく規制がされており、退職慰労金の決議を行うに際しては金額か算定方法について株主総会の決議を得なければならないとされていることから、これらの退職慰労金の金額または算定方法について説明する義務を有しているということができる。にもかかわらず、退職慰労金の具体的な額について説明をせず、さらに算定方法についても基準に従いと述べるのみで基準も示されていないと考えられることから、説明義務を尽くしていないと考えられる。

 したがって、Dの行為は会社法314条違反であるということができる。

(2)これに対して、Y社は、退職慰労金額については会社法314条上説明義務を負わない事項に該当すると主張することが考えられる。

 会社法314条但書によれば、株主総会の目的と関係のない場合、説明することにより株主の共同の利益を害する場合、会社法施行規則71条に規定される場合に説明義務を負わないとされる。会社法施行規則71条によれば、調査をすることが必要な場合や、個人または会社の利益を侵害する場合や、繰り返しの質問の場合に説明義務を負わないとされる。

 本件事案において、Y社は退職慰労金の額についての説明というものは個人に関わるものであること、慣例がないことから説明を拒んでいる。

 しかし、退職慰労金の額について説明したとしても、取締役らの私生活が判明するわけでもないのであるから、個人に代わる問題であるとしても会社法施行規則71条2号に規定されるような個人の利益を侵害することになるとは言えない。また、慣例がないことについては会社法314条、会社法施行規則71条に根拠がない。

 そのため、Y社の反論は認められない。

(3)よって、Xは会社法831条1項1号により決議の方法が法令に違反することを理由として本件決議の取り消しを請求することができる。

(4)会社法831条2項によれば、法令違反の程度が軽微でありかつ、結論に影響を及ぼさない場合には株主総会決議の取消訴訟は裁量棄却される。

 本件事案における説明義務違反の程度は退職慰労金額について説明しなかったという者であるため、重大な違法ということができる。また、これを説明することによって、結論が変わりえるため、会社法831条2項により裁量棄却はされない。

2.よって、Xは本件決議の取り消しを請求することができる。