ロープラクティス民事訴訟法 基本問題19

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題19を解いていきます。

この問題は間接事実の自白に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法における自白とは自己にとって不利益な事実を承認する内容の、当事者双方の主張が一致した口頭弁論における主張のことを指す。この事実とは、権利の発生、消滅、障害、阻止を基礎づける具体的事実である主要事実を指す。このように事実が限定されるのは裁判所の自由心証主義を害しないようにするためである。

 本件事案において、XはXのYに対する本件債権の貸金返還請求訴訟において、Yから抗弁として債権譲渡が主張されたのに対して、債権譲渡の事実を否認している。Yの主張内容は、XはAより本件家屋を買い受け200万円を支払い残りの500万円を本件債権を譲渡することにより弁済したというものである。これに対して、Xは本件家屋を買い受けたことを認めたうえで、債権譲渡がされていないこと、本件家屋の売買契約も合意解除されたことを主張することにより、Yの主張を否認していた。

 この本件家屋の買い受けを認めることは、Yの主張通りに債権譲渡が行われたことを推認させるものであるため、Xに不利な事情であるということができる。にもかかわらず、Yの主張した内容通りの事実を承認しているといえる。しかし、このように、債権譲渡の事実を推認させる事情というものは、Xの債権譲渡によりXが権利を喪失したという権利障害事由を推認させるにすぎないため、主要事実であるとは言えず、間接事実であるといえる。そのため、民事訴訟法上の自白は成立しない。

 よって、Xの自白の撤回は弁論主義第二テーゼにより制限されることなく、行うことができる。

2.したがって、裁判所はXの新たな主張通りの事実すなわち、XがAに貸付け、その売渡担保として本件家屋を買い受け、さらに、本件債権についてもAに取立委任のために譲渡したとの事実を認定し、債権譲渡の事実を否定することができる。

 以上