ロープラクティス商法 問題34

ロープラクティス商法の問題34を解いていきます。

この問題は利益相反取引の効力についての問題です。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.XはYに対して、XB間の本件土地の売買は利益相反取引に当たり無効であることを理由として、Yに対して、本件土地所有権に基づく返還請求を行っているが、このようなXの請求が認められるか検討する。

(1)会社法356条1項2号によれば、取締役が自己または第三者のために株式会社と取引を行った場合に利益相反取引に該当すると規定されている。

 本件事案において、X社はX社の取締役であるA2が代表取締役に就任しているB社に本件土地を半値で売却しようとしているが、このような取引によって、A2は本件土地が半額で売られることによってB社の価値を上げ、利益を享受する一方、X社はA2の行為によって本件土地の半額分だけ損害を被る。そのため、X社と取締役A2の利益が相反しているということができる。

 そのため、本件土地の売買は会社法365条1項2号にいう利益相反取引に該当する。

(2)次に利益相反取引に当たる場合、取締役会設置会社の場合会社法365条1項に基づき取締役会の決議を得なければならないとされる。にもかかわらず、X社は本件土地の売買を行うにあたって、取締役会を開催していない。

 そのため、会社法365条1項に違反する違法な利益相反取引が行われたということができる。

(3)会社法365条1項に違反した利益相反取引の効力は無効であると解されているものの、利益相反取引を理由として無効を主張するためには、取引の相手方保護のために相手方が利益相反取引について悪意であったといえなければならない。

 本件事案において、Y社というものはA2の所属する秘密結社の代表者が代表取締役に就任している会社であるとされている。そのため、X社と無関係であり、利益相反取引の事実を知らないと考えられる。また、BY間の本件土地の売買契約も相当対価で行われたことから、利益相反取引について売買価格の不自然さから気づくこともできなかったものと考えられる。

 したがって、Y社は利益相反取引について悪意ではないため、無効を主張することはできないと考えられる。

2.したがって、XはYに対して本件土地の返還を請求することができない。