ロープラクティス民事訴訟法 基本問題26

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題26を解いていきます。

この問題は文書提出義務の除外事由である自己専利用文書に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法220条4号ニによれば、専ら文書の所持者の利用に供するための文書に該当する場合、文書提出義務を拒むことができるとされている。

 この自己専利用文書に該当するためには、公開が予定されていない文書であることと、公開することによりプライバシーなどの利益侵害が生じることと、公開すべき特段の事情が存在しないことが認められなければならない。

 本件事案におけるYが所持する貸出稟議書は銀行内部で使用される文書であるため、公開が予定されていない文書であるということができる。さらに、この貸出稟議書を公開すると銀行の貸し出し判断について司法審査が及ぶことになってしまい、迅速適切な貸し付け判断が損なわれるおそれがあるため、公開することにより利益侵害が生じるということができる。さらに、Yが破綻しているなどの公開すべき特段の事情もない。

 したがって、本件文書は民事訴訟法220条4号ニの自己専利用文書に該当するということができる。

2.よって、裁判所は本件文書に文書提出命令を発令することはできない。

 以上