ロープラクティス民事訴訟法 基本問題28

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題28を解いていきます。

この問題は公務秘密文書であることを理由とする文書提出命令の除外事由に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法220条4号ロによれば、公務員の秘密に該当する文書であり、文書を提出することによって公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれのある場合に文書提出命令を拒むことができるとされる。

 公務員の秘密に該当するためには、単に形式秘として文書が作成されたといえるだけでなく、実質的に秘匿しておく必要があるといえなければならない。

 全国消費実態調査の調査票である家計簿の提出を求められているが、この調査票である家計簿は生活保護の保護基準を制定するために作成されるものであり、封筒に密封される形で回収される。そのため、少なくとも形式秘として扱われているということができる。また、このように秘匿された形で収集されるのは、統計調査の際に公開しないことで統計の信頼を確保するためであるから、実質秘となっているということができる。

 また、公務員の秘密に当たるとしても、公務の遂行に著しい支障を生じるということが言えなければならない。

 全国消費実態調査の調査票である家計簿が提出された場合、その内容が公開されることになるため、統計の信頼を確保することができない。このように統計の信頼を損なうと、将来の全国消費実態調査を行うことができなくなり、生活保護の保護基準を定立させることができなくなる。そのため、公務に著しい支障が生じるということができる。

 よって、本件事案における全国消費実態調査の調査票である家計簿は民事訴訟法220条4号ロの文書に該当するということができる。

2.したがって、裁判所は民事訴訟法220条4号ロに基づき本件申し立てを却下することができる。

 

 以上