ロープラクティス民事訴訟法 基本問題25

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題25を解いていきます。

この問題は証言拒絶権に関する問題です。取材の自由、表現の自由にもかかわるところなので、憲法の理解としても押さえておきたい問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法197条1項3号によれば、職業の秘密に当たる場合証言を拒絶することができると規定されている。

(1)民事訴訟法197条1項3号の職業の秘密に当たるということができるためには、公開することで証人が不利益を受ける事情でなければならないとされる。本件事案における取材対象者の氏名、住所というものは取材先が誰であるかに関わる情報であり、取材先を明らかにすると報道機関が取材先の人物の信用を失い、将来の取材の自由が制約されることになる。そのため、取材先に関わる取材対象者の氏名、住所というものは民事訴訟法197条1項3号の職業の秘密に当たるということができる。

(2)民事訴訟法197条1項3号により保護に値する秘密であるかどうかは、その証言を行うことにより侵害される利益と証拠としての重要性、迅速な裁判の実施のための必要性などを比較衡量して判断するとされる。

 本件事案において、Bが取材対象者の氏名、住所を明らかにした場合、報道機関としての信用が失われ、将来の取材の自由が侵害される。

 Yが真実性、相当性の抗弁を立証するにあたって、取材活動を行ったBの証言は必要であるといえる。しかし、Bはアメリカの国税当局職員を取材したことを少なくとも明らかにしており、取材対象者の氏名、住所が真実性、相当性の抗弁を基礎づけるうえで重要であるとは言えない。

 したがって、取材対象者の氏名は民事訴訟法197条1項3号上保護に値する秘密であるということができ、Bは証言拒絶権を行使できる。

2.よって、Bの証言拒絶は認められる。

以上