ロープラクティス民事訴訟法 基本問題29
この問題は二重の推定に関する問題です。
1.文書の作成名義人の意思により文書が作成されたことを文書の真正というが、押印のある文書の真正を推定する手段としていわゆる二段の推定が用いられている。
二段の推定とは、本人の押印があることについて印を他人の使わせることは通常ないという経験則から本人の意思による押印の事実を推定し、本人の意思による押印の事実から民事訴訟法228条4項により文書の真正が推定されるというものである。
本件事案において、本件事案において、Yは借用証書の作成がYの意思によるものでないと主張している。この根拠として、Yの押印はあるものの、この押印はAによってされたということを主張しているから、二段の推定の本人の押印があることから、押印は本人の意思によるものであるとの推定を破る主張を行っていると考えられる。
そのため、YはAによる印鑑の盗用の事実の立証に成功しなければならない。
2.よって、YはAによる印鑑の盗用の事実の立証に成功することによって、借用証書が偽造であったことを裁判所に認めさせることができるといえる。
以上