川名壮志著『記者がひもとく「少年」事件史』を読みました。

川名壮志著『記者がひもとく「少年」事件史』(岩波新書)を読みました。

少年法の勉強の参考になること少年事件について学びたいということから読んでみました。

 この本は、少年事件の報道記事、少年事件史から少年像の変化、少年事件から見る社会問題をまとめた本です。

 この本では、「少年」像というものは以下のように移り変わっているものとして描かれています。

 60年代の「少年」は浅沼稲次郎襲撃事件に代表されるように政治的な意図や政治に対する反感をもって事件を起こす存在として、

 永山事件以降の「少年」は高度経済成長期の貧困から発生する存在として、

 80年代の「少年」はツッパリなどに代表されるように、親が保護すべき「子供」のような存在として、

 酒鬼薔薇事件以後の「少年」は遺族に害をなした存在、「少年」の病気や個性俗人的な問題によって害をなす存在として、

 00年代10年代の「少年」は「大人」と同じように制裁、非難を受けるべき存在として、

 変化していったと論じています。

 このように、メディア、記者の描く「少年」像というものが時代とともに変化しているということをまとめた本としては非常に有意義なものであると思います。

 ただ、この「少年」像というものは新聞報道、メディア、記者から見たものであること、殺人事件に対象が限定されていることから、当時の現実の少年はどのようなものであったかということは分かりません。例えば、現在のオレオレ詐欺、特殊詐欺については言及がありません。そのため、あくまでも「記者」の目から見た者であることには注意が必要です。

 時代によって、当時の社会問題、大人の関心、大人の思う社会問題によって「少年」像が形作られていると知る上では非常に有益な内容になっています。