取締役の法律知識〈第3版〉を読みました

久しぶりのブログ更新になります。ここ2週間ほど土日が忙しくて、更新できなかったのです(と、言い訳してみる)。

今週読んだ本は、中島茂著『取締役の法律知識〈第3版〉』(日経文庫)です。

 

取締役の法律知識(第3版) (日経文庫)

取締役の法律知識(第3版) (日経文庫)

 

 

 

この本は、これから取締役になる方、取締役だけれども法律上どういう責任を負うのかわからない方に向けて書かれた本です。けれども、後に述べるように、会社役員の方でなくとも、興味深く読めると思います。私は、会社役員をしているほどたいそうな人間ではありませんが、法曹をめざす者のはしくれとして、取締役の方に対して、どのようにアドバイスをすればよいのかということの参考として、読んでみました。

私としては、この本の株主代表訴訟に関する部分を興味深いと感じながら読んでいました。

まず、株主代表訴訟とは何かという点について説明しますと、会社の取締役が会社の業務に関して会社に損害を与えるようなことをした場合に株主から追及される責任のことです。

この責任が追及される訴訟が提起されますと、取締役自身が職務を適切に行っていたことなどを主張しなければならず、損害額も莫大なものになってしまいます。株主代表訴訟を提起された場合の5つの予防策がチェックリスト方式でこの本に書かれておりこれらを行うことにより、株主代表訴訟の予防がなされるとされています。

その予防方法とは以下の5つです。

1つ目は、経営判断三原則(調査、会議、合理性)の順守

2つ目は、信頼できるスタッフの育成

3つ目は、反社会的行為を絶対にしないこと

4つ目は、内部統制システムの確立

5つ目は、D&O保険の加入

これらを行うことにより、会社の業務の適切性を確保したり、実際に責任を負うとなった場合に個人として負う責任の負担を軽くしたりすることができます。取締役の方としては、これらの方法を知ることにより、対策を練り上げることができますし、会社を相手として相談を受ける弁護士の方としては、これらの点に気を付けながら適切なアドバイスを行う必要があり、このチェックリストは非常に有用なものではないのかと感じています。

 また、この本には、過去に提起された株主代表訴訟の事例が書かれており、銀行の海外支店での違法な取引に対する責任追及や、あるミシンメーカーに対する株主からの恐喝により583億円の責任を負うことになった事例などが紹介されています。これらの事例の一つ一つについて詳しく書くことはしませんが、やはり、取締役としては、適切な業務を行うことが期待されているということでしょう。

 最近でもオリンパス損失隠しについて、約590億円の損害賠償責任が追及されたばかりです。このような損害賠償責任が追及されることになったとき、会社のどのような行為について損害賠償責任を負うこととなったのか、なぜ訴訟が提起されたのか興味深く見ることができるようになります。このように取締役の方でなくとも、新聞の経済、社会面をみるときに役に立つので、非常に有用な本です。

 

取締役の法律知識(第3版) (日経文庫)

取締役の法律知識(第3版) (日経文庫)

 

 アマゾンの商品をチェックしてみたんですがこの本の著者は、他にも会社のコンプライアンスに関する本をいくつも書いているのですね。