平成30年司法試験予備試験民事訴訟法

平成30年司法試験予備試験民事訴訟法を解いていきます。

 

 

 設問1

1.まず、Xの主張として、Yに対して主位的請求を行い、Zに対して予備的請求を行うという主観的予備的併合を行うことが考えられる。

 しかし、主観的予備的併合については明文の規定がなく、さらに、予備的請求の相手方となった者にとって不意打ちとなるため、許されていない。

 したがって、主観的予備的併合を行うことはできない。

2.次に、XがYに対して売買契約に基づく代金の支払いを求める訴えを提起して、Zに補助参加を促すことが考えられる。

 民事訴訟法42条によれば、補助参加を行うためには参加の利益がなければならず、この参加の利益については法律上の利益でなければならないとされる。

 本件事案において、XはYとの間で売買契約を締約したことを理由としてYに対して売買代金請求を行っているが、Yは代理を理由として契約の相手方でないと主張していることから、Zが売買契約の相手方となる可能性がある。さらに、Yが勝訴すると、Zによる無権代理人の責任追及も考えられることから、Zは無権代理人の責任追及について法律上の利益を有しているということができる。

 したがって、Zは補助参加をすることができる。

3.さらに、XはYとZを共同訴訟により訴え、同時審判申出を行うことが考えられる。

 民事訴訟法38条によれば、訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上原因に基づくことが認められなければならない。本件事案において問題となっているのはXと売買契約を締約したのはどちらかということであり、同一の事実上の原因に基づいているということができる。

 さらに、同時審判申出を行うためには、民事訴訟法41条によれば、訴訟の目的である権利とが法律上併存しない関係にあることが認められなければならない。本件事案におけるXの売買代金債権はYが相手方であるか、Zが相手方であるかという点が異なっており、両社は併存しえない関係にあるということができる。

 したがって、XはYとZに共同訴訟を提起し同時審判申出を行うことができる。

設問2

1.民事訴訟法53条1項によれば、補助参加を行うことができるものに対して訴訟告知を行うことができるとされている。訴訟告知がなされた場合、民事訴訟法53条4項によれば、民事訴訟法46条の参加的効力が及ぶとされる。

 本件事案において、上記の通りZは補助参加をすることができるのであるから、民事訴訟法53条1項に基づき訴訟告知をすることができるということができ、同条4項により参加的効力が及ぶということができる。

2.民事訴訟法46条の参加的効力は、敗訴当事者間の公平な分担のためのものであることから、敗訴当事者にしか発生しないものと考えられる。

 本件事案において、Xは敗訴していることから、Xとの関係で参加的効力が生じているということができる。

 参加的効力は判決主文だけでなく判決理由中の判断についても発生し、訴訟告知の場合には前訴の主要事実に関わる範囲でのみ参加的効力が発生するとされる。

 本件事案において、XY間の売買契約は成立していない理由としてZとの間で売買契約が締約されたとされている。この事実というものはXのYに対する訴訟においてXY間の売買契約の締約という主要事実に関わるものではなく、あくまでXY間の売買契約のないことを推認させる事情として認定されたにすぎないから、訴訟告知の効力は発生していないということができる。

3.したがって、Xは後訴で参加的効力の主張を行うことはできない。

設問3

 民事訴訟法152条1項によれば、裁判所は弁論の分離を行うことができるとされているものの、弁論の分離が裁判所に認められた裁量権の範囲を逸脱すると認められる場合には弁論の分離を行うことはできないとされている。

 弁論の分離を行うことができない根拠として、裁判所が弁論の併合を行うことを判断したことがあげられると考えられる。なぜなら、このような場合に弁論の分離を行うと矛盾挙動となり信義則上適切でないと考えられるからである。

 したがって、Xは弁論の併合について判断したことを主張の根拠とすることができると考えられる。