ロープラクティス民事訴訟法 基本問題40

訴えの変更に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.まず、民事訴訟法143条1項に基づいて訴えの変更を行うことが考えられるため検討する。

(1)民事訴訟法146条1項によれば、訴えの変更を行うためには、請求の基礎に変更のないことと、口頭弁論終結前であることと、訴訟を著しく遅滞させないことが認められなければならない。

 本件事案において、Xは訴えを甲家屋の所有権に基づく引き渡し及び移転登記請求から甲家屋が焼失したことを理由とする履行不能を理由とする損害賠償請求に変更しようとしている。この訴えは両方とも甲家屋に関する訴えであることから、請求の基礎に変更がないということができる。

 また、甲が訴えの変更を申し立てているのは、口頭弁論期日前であることから、口頭弁論終結前であるということができ、さらに、口頭弁論も始まっていないことから、訴えの変更を行ったとしても訴訟手続きを著しく遅滞させることはないといえる。

(2)そのため、Xは民事訴訟法143条1項に基づいて訴えの変更を求めることができる。

2.次に、このXの訴えの変更が認められた場合、裁判所は所有権に基づくXの請求についてどのように判断するかが問題となる。

 民事訴訟法143条1項に基づいて訴えの変更が請求された場合、原則として、訴えの追加的変更となる。そのため、訴えの変更前の請求について、請求棄却の判決を下さなければならない。

 しかし、訴えの変更前の判決について既判力が生じると、当事者を過剰に拘束することになりかねないため、変更前の訴えについて既判力を発生させないために、変更前の訴えについて民事訴訟法261条1項に基づいて訴えの取り下げを行ったうえで訴えの変更を行うとよいとされる。

 訴えの取り下げを行うためには民事訴訟法261条1項によれば、相手方の同意を得なければならないとされる。

 そのため、本件事案においてXはYの同意を得ることにより、訴えの交換的変更を行うことができる。

 この場合、変更前の訴えについて裁判所は判断を行わず、変更前の訴えについて既判力は発生しない。

以上