平成25年司法試験民事訴訟法

平成25年司法試験民事訴訟法を解いていきます。

 

 

 設問1

1.民事訴訟法上適法に訴えを提起するためには、訴えの利益がなければならないとされている。確認の訴えについて訴えの利益が認められるためには、その事実を確定することにより、紛争を直接解決するものといえ、その事実を確認する必要があるといえなければならない。

 判例の事案は30筆余の土地及び建物を含む全財産についての遺贈を書いた遺言の効力に関するものであったことから、これらすべての不動産についての紛争を解決するうえで、個々の不動産の所有権確認請求では土地が多数に及ぶことから不便であった事案である。そのため、遺言の無効を確認しておくことによって遺言によって遺贈された多数の土地の所有権を確定させるために必要であり、これらの多数の土地の所有権を確定させ紛争を直接解決させることができるといえる。

 そのため、判例の事案は訴えの利益を認めることができたといえる。

 一方本件事案はEB間の土地甲1をめぐる紛争であり、多数の土地に関する紛争ではないということができる。そのため、遺言を確認することによって所有権を確定させることができるということができるといえるものの、EのBに対する所有権確認の訴えや所有権移転登記請求訴訟によって土地に関する紛争を直接解決することができるため、本件事案において遺言確認の訴えは、その事実を確認する必要があるといえるものの、紛争を直接解決するものということができないため、訴えの利益を書くということができる。

 そのため、本件事案において訴えの利益は認められない。

2.よって、EのBに対する遺言①の無効確認の訴えは確認の利益を欠き不適法なものであるということができる。

設問2

1.EはCの遺言執行者Dに対して所有権移転登記抹消登記請求を行っているが、この訴えについて被告適格がないとして訴えが却下されるか検討する。

 民事訴訟法28条によれば、当事者能力が認められる者は民法その他の法令によって決まるとされている。そのため、法定訴訟担当となっている者について当事者能力が認められる。

 民法1012条1項によれば、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するとされている。このことから、法律上遺言執行のための必要な行為を完了するまで法定訴訟担当により当事者としての地位が認められると解されている。

 本件事案において、DはAの土地甲2のCへの遺贈の際に遺言執行者として指定された者であることから、民法1012条1項によって法定訴訟担当として訴え又は訴えられる地位に立ったということができる。しかし、Eが訴えを提起した時点でDはCへの移転登記手続きを完了しており、遺言執行者としての任務を完了したものということができる。そのため、DはEより訴えの提起を受けた時点で、当事者の能力を失っていたということができる。

  そのため、被告適格はDに認められず、Cに認められるといえる。

2.よって、EのDに対する訴えはDが被告適格を欠くため不適法なものということができる。

設問3

小問(1)

 民法882条によれば、相続は死亡によって開始されるとされ、民法886条以下の規定によって相続人としての地位が認められなければならないとされる。

 そのため、相続により被相続人の財産を包括承継したということができるためには、①被相続人の死亡の事実と、②相続人たる地位にあることを主張しなければならない。

小問(2)

1.共有持分権の主張について、釈明権を行使することにより判決の基礎とできたといえるためには、当事者の主張がなければならないと考えられる。この原則は弁論主義の第一テーゼの主張責任というものであり、訴訟への私的自治の原則の適用や、当事者への不意打ち防止の観点から認められたものであるとされる。ただし、この主張責任をあらゆる事実について適用すると裁判所の証拠による自由な心象形成が阻害されるため、権利義務の発生原因事実、権利阻止、権利消滅、権利停止にかかわる具体的事実である主要事実に限定される。

 本件事案において、共有持分権の主張を行うためには、GHの両当事者のどちらかがGがFを相続したことにより土地乙の共有持分権を取得したことを主張しなければならないが、この主張を行うためには、Fが乙土地を所有していたことと、GがFの相続人であることと、F死亡の事実を主張しなければならない。

 しかし、本件事案においてF所有の事実はHより主張されており、GがFの相続人であること、Fが死亡したことは両当事者のいずれかからも主張されていない。

 そのため、相続による共有持分権の取得の事実を当事者の主張なく認定することができないといえ、裁判所が適切に釈明権を行使することによって判決の基礎とすることができたといえる。

2.よって裁判所が適切に釈明権を行使することによって相続による特定財産の取得を判決の基礎とすることができたということができる。

設問4

1.まず、GのHに対する共有持分権に基づく所有権移転登記請求について既判力が作用するか検討する。

(1)民事訴訟法115条1項1号によれば、既判力は当事者に及ぶとされている。本件事案においてGとHはいずれも前訴の当事者であるため、民事訴訟法115条1項1号に基づき既判力が及ぶ。

(2)民事訴訟法114条1項によれば、既判力は主文に包含される者について発生するとされる。

 本件事案の前訴において、GのHに対する土地乙の所有権確認及び所有権移転登記請求は棄却されていることから、Gは土地乙について所有権を有しないことが前訴判決主文に記載されていることから確定されたものということができる。

 そのため、このGが土地乙について所有権を有しないことについて既判力が発生したということができる。

(3)既判力が作用するのは、前訴判決の訴訟物と同一先決矛盾関係にある訴訟物に対してであるとされる。

 本件後訴においてGは土地乙の共有持分権に基づく所有権一部移転登記請求訴訟を提起しているが、この訴えはGに所有権が存在することを前提としているため、前訴と先決関係にあるということができる。

 そのため、既判力の作用する対象に当たるということができる。

(4)既判力が作用するためには前訴の既判力と矛盾した事実を主張したといえなければならない。

 本件事案において、Gは前訴で土地乙についての所有権を認められなかったにもかかわらず、所有権が認められることを前提とした共有持分権に基づく所有権一部移転登記請求訴訟を提起していることから前訴既判力と矛盾する主張を行ったということが認められる。

(5)したがって本来、Gの後訴は既判力の作用により乙土地の共有持分権が認められず棄却されるということができる。

2.しかし、前訴においてHの請求も前訴において棄却されていることから、前訴の既判力が縮減され、Gの後訴が棄却されないといえるか検討する。

 判例上、前訴で認められなかった請求を蒸し返す場合その主張は当事者の合理的期待に反するため信義則上却下されるとされている。

 本件事案において、Hの訴えは前訴において棄却されているにもかかわらず、Gの請求について争うことにより実質的にGの無権利を主張しHのGに対する明け渡し請求訴訟を蒸し返しているということができる。

 したがって、HはGの訴えが前訴既判力により棄却されるとの主張を行うことができずHの主張は却下されると解される。

 以上