ロープラクティス民事訴訟法 基本問題47

訴訟承継の範囲に関する問題です。

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法50条1項によれば、訴訟の継続中第三者がその訴訟の目的である義務の全部または一部を承継したということが言える場合には第三者に訴訟を引き受けさせることにより、訴訟手続を継続させることができる。

 本件事案において、Yの紛争解決当事者としての地位を承継したと考えられる者はYの相続人とZがいるためそれぞれ検討する。

(1)Yの地位を相続した場合、その相続人はYの債務を包括承継するため、YのXに対する建物収去及び土地明け渡し義務も承継されるということができる。そのため、Yの相続人は相続によりYの義務を承継し、紛争当事者たる地位も取得したということができるため、民事訴訟法50条1項により、義務承継人として訴訟を引き受けることができる。

 よってYの相続人は民事訴訟法50条に基づき、裁判所に申し立てることにより、訴訟承継を行い、訴訟を継続させることができる。

(2)Yが賃借する土地上の建物について賃借した場合、賃借人が退去しなければ、建物収去義務を果たせず、Zに対する建物退去請求はYに対する建物収去義務の一部といえそうではある。しかし、XY間の賃貸借契約とYZ間の賃貸借契約は別個の権利であり、XのYに対する請求の根拠は賃貸借契約の解除である一方、XのZに対する請求は土地所有権に基づく請求である。そのため、XのZに対する請求はYの義務の一部であるということはできない。

 したがって、Zは民事訴訟法50条1項に基づき訴訟承継を行うことはできない。

2.よって、Yの相続人が訴訟承継を行うことによってXY間の訴訟手続きを継続させることができるものの、Zが訴訟承継を行うことによっては訴訟手続きを継続させることはできない。

 そのため、XはYの相続人に対して申し立てを行うことによってXY間の訴訟手続きを継続させることができる。

以上