ロープラクティス民事訴訟法 発展問題8

ロープラクティス民事訴訟法の発展問題8を解いていきます。

この問題は送達に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 第一.後訴①について

1.XはYに対して、民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求として、敗訴判決による損害の賠償及び、前訴に関与する機会が奪われたことを理由とする精神的損害を被ったことを理由とする損害の賠償を求めているが、このようなXの請求が認められるか検討する。

 民事訴訟法114条1項によれば、前訴の確定判決について既判力が生じているとされ、のちの裁判の矛盾する主張に及ぶため、Xの請求は既判力により遮断され、棄却されると考えられる。

 ただし、Yが不当に判決を得る目的で、Xの反論の機会を奪い確定判決を得たといえる場合には、前訴判決は無効となるため、民法709条に基づく損害賠償請求を行うことができる。

 本件事案において、YはPの担当者の照会に対し、Xの勤務先であるR社に送達を行うため、調査し、その結果をPに伝えたにすぎない。そのため、不当に判決を得る目的があったとは言えない。また、判決文の送達についても、Xの妻に届けられていることから、Xの反論の機会が奪われていたということはできない。

2.したがって、XはYに対して、不法行為に基づく損害賠償請求としての後訴①を提起することはできない。

第二.後訴②について

1.XはZに対し、送達の判断について違法があったことを理由として、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求を行っているが、このXの請求が認められるか検討する。

 民事訴訟法98条1項によれば、送達は職権で行われることから、送達についての判断を行うことについて裁判所に裁量が認められる。そのため、明らかに調査義務を怠り又は不合理な判断をすることにより、送達を適切に行わなかったと認められる場合には裁判所に送達の違法があることを理由として、国家賠償請求が認められる。

 民事訴訟法103条1項によれば、送達場所は送達を受ける者の住所において行うべきとされる。本件事案において、この調査の結果Xは住所に所在していないことが明らかになっていることから、民事訴訟法103条1項に基づく送達を行わなかったことに違法はない。

 また、民事訴訟法103条2項によれば、送達を受ける者の就業場所においてすることもできるとされる。本件事案において、PはYに対して、住所に居住しているか調査を求めており、これに対して、Yが住所にはXの家族がおり、本人はいないと回答し、Xの就業場所は不明であると回答しているため、民事訴訟法103条2項に基づく送達を行わなかったことについての違法はない。

 そのため、裁判所は調査義務を怠ったということはできず、さらに、裁判所も不合理な判断を行ったということはできないため、裁判所の判断に違法はない。

2.したがって、XのZに対する国家賠償請求は認められない。