ロープラクティス民事訴訟法 基本問題24

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題24を解いていきます。

この問題は証明責任の分配に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法上、証明責任の分配は法律の要件に従って分類される。すなわち、請求原因事実については原告に証明責任があり、抗弁事由については被告に証明責任がある。抗弁事由となるものは権利の障害、阻止、停止自由になる事実のことである。

 本件事案において、XはYに対して土地の無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除を理由とする本件建物退去・土地明渡請求である。そのため、Xとしては賃貸借契約の締約の事実、無断転貸の事実、解除の意思表示の事実、Yが土地を占有している事実を主張しなければならないとされる。本件事案において、Xはこれらの事実を主張していることから、Xの請求原因事実については主張が尽くされているといえる。

 これに対して被告としては転貸借の承諾の事実か、転貸借が信頼関係を破壊しないとの事実を抗弁として主張しなければならない。なぜなら、これらの事由は権利障害事由だからである。本件事案において、Yは転貸借の承諾の事実を第一審において主張しているが、信頼関係不破壊の事実は主張していない。

 では、民法612条による無断転貸による解除権の発生は信頼関係を破壊させるような信義則違反がある場合にのみ認められている点をどう考えるか問題となるが、この信頼関係破壊の事実の主張はYが信頼関係不破壊を主張してきた場合の再抗弁として主張されるべきものである。そのため、本件事案のようにYが信頼関係不破壊の主張をしていない状況において、Xに信頼関係破壊の事実について証明責任を課すことはできない。

2.そのため、裁判所はXが信頼関係破壊の事実を主張していなくとも解除を認めることはできる。

 以上