ロープラクティス民事訴訟法発展問題25

確定判決の無効に関する問題です。

この論点は再審や既判力とも関係してきますので深く勉強しておいて損はないと思います。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.前訴と後訴の関係

(1)民事訴訟法115条1項1号によれば、既判力は当事者に及ぶとされている。そのため、XとYに前訴の既判力が及んでいるということができる。

 また、民事訴訟法114条1項によれば、主文の範囲について既判力が発生するとされていることから、YのXに対する損害賠償請求を認めるという範囲について既判力が発生するといえる。

 既判力の作用は前訴と同一、先決、矛盾関係にある訴訟物について及ぶとされている。本件事案において、XはYに対して前訴が虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔して得たものであることを理由として無効と主張し民法709条に基づいて損害賠償請求を行うものであることから、前訴判決の既判力と矛盾関係にある訴訟物であるといえる。

 また、既判力が作用するためには、前訴判決と矛盾することが認められなければならない。本件事案において、後訴は前訴判決が虚偽のものであり無効であるっことを理由とするものであることから、前訴判決と矛盾するものであるということができる。

(2)そのため、後訴は、既判力の作用により遮断され、棄却されるということができる。

2.判決の騙取を理由とする損害賠償請求

(1)判決の騙取を理由とする損害賠償請求が前訴判決の既判力により遮断されるとしても、前訴判決を求める際に虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔し、相手方を害するために故意に請求したと認められる事情がある場合に限り、前訴判決は無効であり、既判力の作用により遮断されずに損害賠償請求を行うことができるとされている。

 本件事案において、XはYの前訴判決は虚偽の事実を主張して得られたものであると主張しているものの、Xは前訴口頭弁論期日においてYの主張を争い、Yの前訴が虚偽の事実を内容とするものであると主張していなかったのであることから、事実認定に差異があったにすぎないということができる。

 したがって、前訴は判決の騙取によるものではないということができる。

(2)よって、Xの判決の騙取を理由とする損害賠償請求は認められない。