ロープラクティス民事訴訟法発展問題1

移送と管轄に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

1.Y1らはA銀行の本店の所在地を専属的管轄裁判所とする旨の定めは公序良俗違反又は独占禁止法違反に当たることから、無効であることを理由として、民事訴訟法16条1項によって奈良地方裁判所に移送させるべきであると主張するため検討する。

 民法90条公序良俗に違反するということが言えるためには国家秩序や社会風俗に違反したということが認められなければならないが、専属的合意管轄の定めというものは裁判管轄を一か所に集め裁判を容易に提起できるようにするためのものであることから、国家秩序や社会良俗に反するということはできない。

 したがって、このY1の主張は認められない。

2.次にY1は奈良地裁における審理の方が当事者間の公平に資するため民事訴訟法17条によって移送されるべきであると主張するため検討する。

 民事訴訟法17条によれば、訴訟がその管轄に属する場合においても、訴訟の著しい遅滞を避け又は当事者間の公平を図るために必要な場合は裁量移送を行うことができるとされている。

 本件事案において、AY1間の契約によって東京地裁が専属的合意管轄とされていることから、XのY1、Y2に対する訴えが東京地裁に提起されたとしても管轄に属する場合に当たるということができる。しかし、Y1、Y2はいずれも奈良の者であり、Y1、Y2はいずれもAの奈良支店において契約を締約したことが認められる。そのため、証拠が奈良に集中しており、公平を図るためには奈良において審理を行うべきであるということができることから、民事訴訟法17条に基づき奈良地方裁判所への移送を申し立てることができる。

 したがって、このY1らの移送の申し立ては民事訴訟法17条に基づいてすることができる。