平成31年司法試験予備試験行政法

司法試験予備試験行政法を解いていきます。

 

行政法ガールII

行政法ガールII

  • 作者:大島 義則
  • 発売日: 2020/11/02
  • メディア: 単行本
 

 

 設問1

1.行政事件訴訟法9条1項によれば、原告適格が認められるためには法律上の利益が認められなければならない。この法律上の利益はもっぱら公益を保護するにとどめず、私人の具体的権利義務又は利益を保護していると認められるものも含む。

 条例6条1項1号によれば、都市計画区域に広告物を設置するためには知事の許可を受けなければならないとされている。また、条例9条によれば、この広告物の設置基準は規則の10条に委任されている。規則10条1項によれば、基準は別表第4にゆだねられており、別表第4によれば、景観を害しないことが定められている。

 この景観というものは、公益であるため、Cの個人的法益を保護していないと考えられるものの、景観利益を違法に害した場合は不法行為に基づく損害賠償請求ができると解されていることから、条例6条1項の委任する規則10条の別表4は、景観利益を私人の利益として保護していると解される。

 そのため、付近住民であるCは本件許可処分について法律上の利益を有しているということができる。

2.よって、Cには行政事件訴訟法9条1項により原告適格が認められる。

設問2

1.A県知事は本件広告物が規則10条2項により委任される別表5の基準としての2号ハによれば、広告物について鉄道までの距離は100メートル以内でなければならないとされているにもかかわらず、本件広告物から鉄道までの距離が100メートル未満であることから、本件条例6条1項の委任する規則10条2項に違反することを理由として本件不許可処分を下している。

 しかし、条例6条1項は条例1条に規定されたように、景観を保護するために規定されたものであることから、規則10条1項、2項は景観保護のための規定として解釈しなければならない。このことからすると、条例6条1項により許可処分を受ける要件は景観に合致することであると解される。

 景観に合致するか否かは、周囲の状況や街づくり計画などの政策的要素を総合的に考慮して判断されるものであることから、条例6条1項に当てはまるか否かについて要件裁量が認められる。

 そう解すると、別表5の基準は景観に合致するかの裁量基準であることから、別表5の基準に合致していなくとも景観に合致する場合には条例6条1項に基づく許可処分が認められる。

 本件事案における本件広告物は、鉄道の路線から100メートル未満の距離にあるものの、路線は地下にあることから、電車から本件広告物を見ることはできず、電車からの景観を損ねることはない。したがって、別表5の基準に合致していなくとも、規則10条の基準に適合するということができるため、条例6条1項の要件を満たす。

 したがって、A県知事の本件不許可処分は違法であるということができる。