ロープラクティス民事訴訟法 発展問題10

ロープラクティス民事訴訟法の発展問題10を解いていきます。

この問題は鶴岡灯油事件をモチーフとした損害額の立証に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.不法行為に基づく損害賠償を行うためには、不法行為によって受けた損害の損害額について主張しなければならない。

 本件事案において、Xは値上げ協定によって生じた損害額について、現実に灯油を購入した価格と、価格協定があった時点の直前の灯油の市場価格であるとしている。しかし、灯油の購入価格は経済事情によって変動するものであるから、Xが灯油を購入した時点本来の価格の差額を損害額として証明しなければならないため、損害額についての証明があったということはできない。

 したがって、Xは損害額についての証明を行ったということはできない。

2.しかし、民事訴訟法248条によれば、損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが困難な場合には裁判所は相当な額を損害として認定することができるとされる。このような規定がされているのは、損害が発生したにもかかわらず、損害額の算定が困難であるために救済が行われないというのでは不合理だからである。

 本件事案における損害というものは独占禁止法違反を理由とする損害であり、さらに、灯油の価格というものは経済事情によって変動するものであることから、損害の性質上その額を立証することは困難であるということができる。また、Yらの価格協定により、Xは購入すべきでない価格で灯油を購入したということができるため、損害が発生したことが認められる。

 そのため、裁判所は民事訴訟法248条に基づいて損害額として相当な価格を決定し、その額で損害賠償請求を認めることができる。

3.したがって、Xの主張を基にした損害ではなく、裁判所が相当な価格として決定した額を基にXのYに対する損害賠償請求を任用することができる。

 以上