平成31年司法試験予備試験民法
設問1
1.DはCに対して本件土地所有権に基づき所有権に基づく返還請求としての本件建物の収去及び本件土地の明け渡し請求を行っているが、これらの主張が認められるか検討する。
(1)所有権に基づく返還請求を行うためには、所有権者であることと、妨害を行っていることが認められなければならない。
本件事案において、Cは本件土地上に建物を建て居住していることから、本件土地の占有を害しているということができる。また、DはAより土地を相続したBから土地を買い受けたものであることから、所有権者であるということが認められる。
したがって、DはCに対して所有権に基づく返還請求としての本件建物収去及び土地明け渡し請求を行うことができる。
(2)これに対してCは、占有権限の抗弁を主張することが考えられる。その理由として、Aから本件土地の贈与を受けたこと、本件土地所有権を有していることから、本件土地上にC所有の建物を建て建物保存登記を経ていることを主張している。
民法177条によれば、不動産について利害関係を有する本人またはその包括承継人以外の者が自己の占有権限を対抗するためには、登記を経ていなければならないとされる。
本件事案におけるCは本件土地の所有権者であると主張する者であり、Aの相続人以外の者であることから、本件土地について利害関係を有している第三者ということができる。
そのため、Dに対抗するためには登記を経ていなければならないが、本件土地所有権の移転登記を行っていないことから、CはDに対して、本件土地の所有権を対抗することができない。しかし、本件建物についてCを所有者とする所有権保存の登記を行っていることから、本件土地上の建物所有権をCに対抗することができる。
そのため、Cの占有権限の抗弁は認められる。
2.よって、DのCに対する請求は認められない。
設問2
1.CはDに対して、本件土地所有権に基づく妨害排除請求として本件土地の抵当権抹消登記請求を行っているが、認められるか検討する。
(1)所有権に基づく妨害排除請求が認められるためには、不動産の所有権と不動産の占有を妨害しているとの事実を主張しなければならない。
本件事案において、CはAより本件土地の所有権を譲り受けた者であり、Dは抵当権設定登記を備えることによって、本件土地を占有していることから、CはDに対して、所有権に基づく抵当権設定登記抹消登記請求を行うことができる。
(2)これに対して、Dは抵当権設定登記は本件債務を担保するために設定されたものであることから、抵当権設定登記の保持権原があるということを主張すると考えられる。この主張を行うためには、本件債務の成立、本件債務を担保するために抵当権設定契約が行われたこと、抵当権設定契約に基づく登記であることを主張しなければならない。
民法587条に基づき金銭消費貸借を締約するためには、金銭消費貸借契約の締約と金銭の交付が行われなければならない。本件事案において、DはBとの間で金銭消費貸借契約を締約しており、金銭消費貸借契約に基づき金銭の交付が行われていることから、本件債務は有効に成立しているということができる。
また、DはBとの間で抵当権設定契約を締約していることと、それに基づく陶器が認められる。
そのため、Dの登記保持権原の抗弁が認められる。
2.したがって、CのDに対する請求は認められない。