ロープラクティス商法 問題22

ロープラクティス商法の問題22を解いていきます。

 私が使っているのはロープラクティス商法[第3版]ですので多少問題が違うかもしれません。

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 設問(1)

1.XはYに対して、会社法830条1項に基づき本件決議の不存在確認訴訟を提起することが考えられる。

(1)会社法830条1項に基づき株主総会決議不存在確認を求めるためには、株主総会が事実上存在していないか株主総会の手続きに著しい違法があり、株主総会が存在していないと認められる場合でなければならないとされる。

 会社法296条3項によれば、株主総会を開催するためには取締役が招集しなければならないとされる。この規定は取締役設置会社を前提としているため、取締役には代表権がなければならないと解されている。そのため、取締役会設置会社の場合、株主総会を開催するためには、代表取締役株主総会を招集しなければならない。

 本件事案において、平成25年2月1日の株主総会の無効を前提とした場合、Y社代表取締役はXであるにもかかわらず、A,Bの取締役会決議のみによって、株主総会を開催していることから、会社法296条3項の株主総会の招集手続きに重大な違法があったということができる。

 そのため、本件総会には著しい違法があり、本件決議は不存在であったということができる。

(2)これに対して、株主総会の招集手続きに違法があったとしても、株主全員が開催に同意して出席して株主総会を開催した場合、招集手続きに違法はなかったものと判断される。

 本件事案において、Y社株主は全員本件決議の内容について同意の上出席していることから、本件総会の招集手続きには違法がなかったといえる。

2.したがって、Yの反論が認められ、Xの本件決議の無効の訴えは認められない。

設問(2)

取締役が株主総会決議に違法があることを理由として、取締役の地位確認訴訟を提起した後に、株主総会決議において、取締役が選任された場合、当該取締役は取締役の地位に復帰することはないため、訴えの利益が失われると解されている。

 そのため、本件事案において、もし本件決議不存在確認の訴えが棄却された場合、A,B,Cが適法に取締役に選任されていることになるため、Xが取締役の地位に復帰することはもはやない。そのため、訴えの利益が失われ、地位確認の訴えは却下される。

 一方、本件決議不存在確認の訴えが認容された場合、Xは取締役の地位に復帰する可能性があるため、訴えの利益は消滅せず、Xの地位確認の訴えについて本案判決をすることができる。

 

会社法296条3項上「取締役」と規定されているため、間違えた答案

設問(1)

1.XはYに対して、会社法831条1項1号に基づき本件決議の取り消しを求めることが考えられるため、検討する。

(1)会社法831条1項によれば、株主総会決議取り消しの訴えを提起するためには、株主総会決議の日から3か月以内に訴えを提起しなければならないとされる。本件事案において、訴えを提起した時期は明らかでないものの、XはAらの動きを知っており、地位確認の訴えも提起していることから、出訴期間内に訴えを提起したものと考えられる。

(2)会社法831条1項1号によれば、株主総会の招集手続きまたは決議の方法について法令違反があった場合に取り消すことができるとされている。

 会社法296条3項によれば、取締役が株主総会を招集することができ、会社法298条1項によれば、株主総会を招集するためには、取締役の決定がなければならないとされていることから、取締役会設置会社においては、取締役会の決議がなければならないとされる。

 会社法366条によれば、取締役会を招集するためには、取締役が召集を決定しなければならず、会社法368条1項に基づき招集しなければならないとされる。

 会社法368条1項によれば、招集するためには各取締役に対して通知を発しなければならないと規定されているが、これは、取締役全員に対して通知を発しなければならないとしたものである。にもかかわらず、Xに通知がない。そのため、平成26年3月の本件決議の基礎となる株主総会の招集が適法に行われていないということができる。

 そのため、本件決議の基礎となる取締役会決議は無効であるということができる。

 したがって、本件決議の招集手続きには法令違反があるということができるということをXは主張する。

(3)しかし、取締役会決議の招集手続きに瑕疵があるとしても、その瑕疵がなくても適法に取締役会決議が得られたということができる特段の事情のある場合には取締役会決議は無効にならないということができる。

 会社法369条1項によれば、取締役会決議は議決に加わることのできる株主の過半数が出席し、過半数の賛成を得れば、適法に決議が成立することから、仮に、Cの代わりにXに招集通知がなされ、Xが出席していたとしても、3人の取締役のうち2人が賛成すると考えられることから、瑕疵がなくても適法に取締役会決議を得ていたということが考えられることから、本件決議の基礎となる取締役会決議に違法はない。

 したがって、本件決議の手続きに会社法298条1項の違法があることを理由として会社法831条1項に基づく本件決議の取り消しを主張することはできないと考えられる。

2.したがって、Xは本件決議に瑕疵があることを理由として、本件決議の取り消しを主張することはできない。

設問(2)

 取締役が株主総会決議に違法があることを理由として、取締役の地位確認訴訟を提起した後に、株主総会決議において、取締役が選任された場合、当該取締役は取締役の地位に復帰することはないため、訴えの利益が失われると解されている。

 そのため、本件事案において、もし本件決議の取消の訴えが棄却された場合、A,B,Cが適法に取締役に選任されていることになるため、Xが取締役の地位に復帰することはもはやない。そのため、訴えの利益が失われ、地位確認の訴えは却下される。

 一方、本件決議取り消しの訴えが認容された場合、Xは取締役の地位に復帰する可能性があるため、訴えの利益は消滅せず、Xの地位確認の訴えについて本案判決をすることができる。