ロープラクティス商法 問題25

ロープラクティス商法の問題25を解いていきます。

株主提案権に関しての問題です。

 私が使っているのはロープラクティス商法の第三版ですのでもしかしたら問題が少し違うかもしれません。

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.本件事案において、Xは本件役員選任議案の否決決議について会社法831条1項1号に基づく取り消し請求を行っているが、この請求が認められるか検討する。

 会社法831条1項によれば、株主総会決議の取り消しを請求することができるとされているものの、否決決議を取り消しても会社の法的地位について何らかの変動をもたらすわけではないことから会社法831条1項の決議に該当しないと解されている。

 本件事案において、Xは本件役員選任議案の否決決議についての取り消しを行っているものの、この決議は否決決議であるため、会社法831条1項の決議に該当しないとして、却下される。

 したがって、Xの本件役員選任議案の否決決議の取消は認められない。

2.次に、Xは本件取締役会提出議案の可決決議について会社法831条1項1号に基づいて取り消しを請求しているが、この請求が認められるか検討する。

(1)会社法831条1項1号によれば、株主総会決議の取り消しを求めるためには招集手続き又は決議の方法についての法令定款違反が認められなければならない。

(2)本件事案において、Xは本件定款変更提案を行っているものの、Y社は株主提案の対象事項とならないことを理由としてこの提案を本件総会に上程していない。というのも、会社法304条によれば、議案提出を行うためには株主総会の目的すなわち議題の目的に関係しなければならないとされ、本件総会の目的は役員等の選任に関するものであり、定款変更を目的としていないため、会社法304条に基づいた提案でないと考えられるためである。

 そのため、本件定款変更提案というものは、議案提出ではなくて、議題提出であると考えられるため、この議題提出が適法に行われたか検討する。

 会社法303条1項によれば、株主は議題提出を行うことができるとされているが、この提案を行うためには総株主の議決権の3%以上の議決権を有する者が、株主総会の日の8週間前までに提出しなければならないとされる。

 本件事案において、Xから議題の提出がなされたのは2月のことであり、平成25年6月27日の株主総会の8週間以上前であるということができる。また、XはY社設立時から5%のY社株式を有しているため、3%以上の議決権を有するものであるということができる。そのため、Xの本件定款変更提案はXによる議題提出として適法に行われたということができる。したがって、これを取り上げなかったY社の株主総会の決議の方法には法令違反があるといえる。

(3)また、会社法831条1項柱書によれば、株主総会決議の取り消しを求めるためには決議の日から3か月以内に訴えを提起しなければならないが、6月27日の株主総会決議の日から、3か月以内の7月に訴えを提起していることから、出訴期間についての違法はない。

(4)さらに、会社法831条2項によれば、法令違反の程度が重大でなく、かつ決議に影響を与えない場合には裁量棄却されるとされるが、本件事案において、議題を取り上げなかったことが、取締役の選任決議に影響を及ぼすとは考えられないものの、議題を取り上げないというのは重大な違法であることから、会社法831条2項によって裁量棄却されない。

(5)したがって、Xの本件取締役会提出議案の可決決議について取り消すことができる。

 以上