ロープラクティス商法 問題28

ロープラクティス商法の問題28を解いていきます。

この問題は株主総会決議取り消しの訴えについての諸問題を扱った問題です。

わたしが扱っているのは最新版ではなく、第三版の問題集です。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 第一.文1について

小問(1)

1.Xは取締役の地位存在確認の訴えを提起することが考えられるため検討する。

(1)平成22年11月15日の定時株主総会の決議が無効となれば、Xが取締役の地位にあることが確認されることから、会社法831条1項1号による取消をまず検討する。

(2)会社法831条1項によれば、株主総会決議取消の訴えを提起するためには株主総会の決議の日から3か月以内に訴えが提起されたことが認められなければならない。本件事案において、Xが株主総会決議により取締役の地位から排除されたと知ったのは平成23年1月31日のことであるため、株主総会決議の日から3か月以内のことであるということができる。

 また、株主総会決議取り消しの訴えを提起する原告適格は株主島に認められ、Xは株主であることから、原告適格も認められる。さらに、会社法834条17号によれば、被告適格は株式会社とされていることから、Y社に認められる。

 したがって、訴訟要件は満たしているといえる。

(3)会社法831条1項1号によれば、株主総会決議の取り消しを主張するためには、株主総会の招集手続き又は、決議の方法について法令定款違反があることが認められなければならない。

 本件事案において、Y社代表取締役のAは定時株主総会の招集を取締役会を開催することなく行っているが、会社法298条4項によれば、株主総会を開催するためには、取締役会の決議によらなければならないとされている。

 本件事案において、Aは取締役会決議にかけることなく株主総会の招集を決定しているため、会社法298条4項違反があるということができる。

 したがって、会社法831条1項1号の株主総会の招集について法令違反があるということができる。

2.よって、Xは平成22年11月15日の株主総会決議の取り消しを請求することができる。

小問(2)

 会社法831条2項によれば、違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を与えない場合には裁量棄却することができるとされる。

 本件事案における違反というものは、株主総会の開催を行うにあたって、取締役会決議を経ていなかったというものであるうえ、これまでもこのような扱いについて異を唱えられたことはなかったことから、重大な違法ではないと考えられる。さらに、Xの有する株式の数は400であることから、過半数をとることができておらず、Xが反対したとしても、過半数による賛成を得ることができると考えられる。そのため、決議に影響を与えないということができる。

 したがって、会社法831条2項により、裁量棄却される。

第二.文2について

 取締役の地位確認訴訟のための、株主総会決議取り消しの訴えは、取締役の地位に復帰することを求めて行われるものであることから、取締役の地位に復帰する可能性がなくなると、訴えの利益が消滅する。

 本件事案において、平成24年10月25日の株主総会決議により新たな取締役が選任されていることから、Xが取締役に復帰する可能性はない。

 そのため、訴えの利益は消滅しているということができ、Xの訴えは却下される。