ロープラクティス商法 問題26

ロープラクティス商法の問題26を解いていきます。

この問題は委任状勧誘に関する問題です。モリテックス事件に類似しています。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.本件事案において、X社は会社法831条1項1号に基づいて本件決議の取り消しを求めているが、この訴えは認められるか検討する。

(1)会社法831条1項柱書によれば、株主総会決議の取り消しを求めるためには株主が株主総会決議の日から3か月以内に訴えを提起しなければならないとされている。本件事案において、Y社株主であるXが訴えを提起した日付は明らかでないものの、出訴期間について遵守されているものと考えられる。

(2)また、会社法831条1項1号によれば、株主総会決議の取り消しを求めるためには、株主総会の決議の方法について法令違反があったことが認められなければならない。

(3)本件事案において、Y社による委任状勧誘は委任状府令に違反しているため、会社法831条1項1号の決議方法の法令違反に該当すると考えられるものの、委任状府令というものは法令ではないため、これに違反していても、会社法831条違反とはならない。したがって、委任状府令違反を理由として、Xは本件決議の取り消しを請求することはできない。

(4)また、本件事案において、Y社はX会社が勧誘した委任状について本件会社提案の関係で出席議決権数に含めなかったため、本件会社提案について賛成多数により可決となっているが、このような扱いは会社法309条1項に違反すると考えられる。

  これに対して、X社の委任状勧誘に関して委任状用紙に会社提案に関する賛否の欄が設けられていなかったため、委任状府令に違反することを理由とすることが考えられるが、委任状府令というものは法令ではないため、この法令に違反していても適法な委任状となるため、委任状府令に違反していることを理由とする議決権数に含めない判断は違法であるということができる。

 また、会社提案に関して賛否の欄が設けられていないため、会社提案に関して何ら判断がされていないとして、本件会社提案について出席議決権数に含めなかったと反論することが考えられるものの、しかし、会社提案と株主提案が対立する関係にある場合、株主提案に関して賛成ということは会社提案について反対を意味することとなるため、会社提案について賛否が示されていないと判断することはできない。そのため、このようなことを理由として、議決権数に含めなかったY社の判断は違法なものということができる。

(5)したがって、X社の勧誘した委任状について本件会社提案の関係で出席議決権数に含めなかったY社の措置は会社法309条1項に違反する違法な決議の方法であるということが認められる。

 したがって、会社法831条1項1号の事由に該当するということができる。

(6)また、会社法831条2項によれば、法令違反の程度が重大でなくかつ決議の結果に影響を与えないと認められる場合には裁量棄却されると規定されている。

 本件事案における、議決権数に含めない措置というものは議決内容を左右するものであるから、重大な違法であるということができ、本件会社提案はXの委任状を議決権数に含めると過半数にならずに否決されていたと解されることから、決議の結果に影響を与えるということができる。

2.よって、XはY社に対して本件決議の取り消しを請求することができる。

 

 

 

 参考判例のうち片方は金融商品取引法判例百選に収録されています。気になる方は読んでみてください。