ロープラクティス民事訴訟法 基本問題16

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題16を解いていきます。

この問題は弁論準備期日に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 設問(1)

1.民事訴訟法168条によれば、争点の整理を行うために必要がある場合には弁論準備手続を行うことができるとされる。口頭弁論期日は、争点の整理を行い、迅速な裁判を実現するために行われるものであることから、当事者の自由に主張を展開することが期待されている。そのため、弁論準備期日における記録を証拠として使うと、自分の主張が証拠として使われることを恐れて、自由な主張を行わなくなると考えられるため、当事者の自由な主張の妨げになる。そのため、弁論準備期日における記録を証拠とすることはできない。

 本件事案において、XはYが口頭弁論手続で主張した内容を証明するために、弁論準備期日においてYが主張した内容を逐語的に記録した文書を書証として提出している。しかし、このように弁論準備手続における当事者の主張を証拠とすると、弁論準備手続における当事者の主張の妨げになることから、Xの提出した文書は証拠として用いることはできないと考えられる。

 

 2.よって、裁判所はこのようなXの書面について書証として認めることができない。

設問(2)

1.民事訴訟法174条によれば、弁論準備手続の終了後に新たに攻撃防御方法を主張した場合、提出することのできなかった理由を説明しなければならないとされる。この規定に違反した場合の措置について規定はないものの、弁論準備手続は争点整理を行い、迅速な裁判を行うために行われるものであることから、説明を行わず、かつ、新たに追加された主張が裁判の期日を著しく遅延させる恐れのある場合には新たに主張された攻撃防御方法について却下することができると解される。

 本件事案において、Yは弁論準備手続で主張しなかった代金減額請求について新たに主張し、主張しなかった理由を説明していない。そのため、民事訴訟法174条に違反した主張をYが行っているということができる。しかし、Yがこのような主張を行ったのは口頭弁論期日の冒頭であることから、この主張によって裁判の手続きに遅延が発生するとは考えられない。

2.したがって、裁判所はYの代金減額請求の主張を却下することはできないと考えられる。