古野まほろ著『事件でなければ動けません』を読みました

古野まほろ著『事件でなければ動けません』(幻冬舎新書)を読みました。

犯罪被害者救済の問題として、警察が動かないことが多々あると聞いたことがあるため、読んでみました。

 

 この本は、元警察官僚の著者が被害者の被害申告を聞いても動かない理由、動かすにはどうすればよいかというヒントをまとめた本です。

この本の中で、警察官が動かない理由として、以下のものを挙げています。

①かつての〈民事不介入の原則〉、②〈権限〉行使のハードル、③〈犯罪〉認定の専門性、④〈初診〉診断の難しさ、⑤〈警察はタダ〉の影響、⑥〈捜査経済〉の問題、⑦市民の〈いきなり取り下げ〉、⑧市民の〈底意〉等

第2章 動かない理由、動けない理由 109頁

これらによって、警察官のサボタージュ、動きたくても動けない、先入観によって動かないという問題を発生させていると論じられています。

 そのため、被害申告をしたい市民としてはどうすべきかということになるのですが、この本の中では、それに対する一般的な回答が避けられています。というのも、110番通報、警察署での相談、被害届、告訴のいずれも問題があり、それぞれ対応が違うためです。おまけに、いずれの方法でも警察官が動かない、さぼるための要因があり、どの方法であっても動くとは限らないという理由もあります。

 しかし、それでも動きやすくなる要因としては、生命、身体、財産に対する被害であること、緊急性を有することなどが挙げられています。これらの事情があれば、被害申告をして警察官が動いてくれるかもしれないです。

 そのため、この本は警察官を動かすヒントにはなると考えられました。仮に警察官を動かしたいと思うなら、これらのヒントを頼りに被害申告をしてみようと思いました。

 あと、この本は著者の経験をもとに書かれているため、参考文献が非常に少ない(引用があるのは、大宰府事件、桶川ストーカー事件の部分くらいでしょうか)です。客観的な見方でないとして、内容の信用性は落ちるかもしれないです。ただ、警察官に被害申告をして受理してもらうためのヒントとしては良い内容になっていると思われるため、参考にはしていきたいです。

 

 

著者の古野まほろは小説家だそうなので、小説の方にも興味がわけば読んでみたいです。