令和元年司法試験商法

司法試験商法を解きました。

新株予約権の不公正発行についてうまくかけているか不安ですがこのように書いてみました。

何かおかしなところがあれば、コメントお願いします。

 

一問一答 平成30年商法改正 (一問一答シリーズ)

一問一答 平成30年商法改正 (一問一答シリーズ)

 

 あと、商法が改正されそうなので、来年の司法試験受験生的には不安です。

 

設問1

1.乙社が甲社の招集を行う場合

 乙社は、会社法297条に基づき、株主総会の招集を行い、会社法303条に基づき株主提案権を行使することを平成301月に計画しているが、可能であるか検討する。

(1)会社法2971項によれば、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6か月前から引き続き有しているものでなければ、株主による招集請求をすることはできないと考えられている。

 本件事案における乙社は平成295月の時点で4%の議決権を有していた株主であるから、平成301月時点で議決権の100分の3以上の議決権を6か月前から有する株主であったということができる。

 ただし、取締役が招集手続きを行わない場合や、8週間以内に招集通知が発せられない場合には、裁判所の許可を得なければならないとされる。

(2)会社法297条に基づいて乙社が臨時株主総会の開催を行った場合、会社法3032項によれば、取締役会設置会社の総株主の議決権数の100分の1以上の議決権を6か月前から引き継月有する株主は、株主総会の日の8週間前までに株主提案権を行使しなければならないとされる。

 本件事案における乙社は6か月前から、議決権数の100分の1以上の議決権を有する株主であることから、8週間前に株主提案権を行使することにより、株主総会を開催し、株主総会の権限に属する一定の時効を提案することができる。

2.定時株主総会を待つ場合

 乙社が定時株主総会において、会社法303条の株主提案権を行使することができるか検討する。

 会社法304条によれば、株主は、株主総会の目的である事項について議案を提出することができるとされている。この議案というものは、株主総会の目的と異なり、目的に対する対案のことである。そのため、乙社は自由に議題を提出することは会社法304条に基づいてはできないということができる。

 一方、会社法3051項によれば、公開会社で、取締役会設置会社である場合、総株主の議決権の100分の1以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主であるならば、株主総会の日の8週間前までに株主総会の議題を提案することができるとされる。甲社は公開会社で取締役会設置会社であり、乙社は総株主の議決権数の100分の1以上の議決権を6か月以上米から引き続き有する株主であるため、株主総会の日の8週間前までに通知することにより、会社法3051項に基づき、株主提案権を行使することができる。

設問2

1会社法247条によれば、募集に係る新株予約権の発行をやめることを請求することができるとされているものの、株主の不利益というものは新株予約権の無償割当の場面においても発生しうる。そのため、会社法247条の類推適用により1号又は2号の事由が存在している場合に新株予約権の無償割当の差し止めを請求することができる。

 そのため、以下会社法247条各号の自由がないか検討する。

(1)会社法1091項によれば、株主平等原則が規定されているものの、会社法2782項によれば、新株予約権の無償割当を行う場合、株式の数に応じて取り扱わなければならないとされていることから、会社法1091項に規定される株主をその有する内容及び数に応じて平等に扱うべきとする株主平等原則の趣旨が及ぶ。

 そのため、不公正な内容の新株予約権の無償割当は原則違法であるものの、株主平等原則は、株主の全体の利益を保護するための規定であることから、不公正な内容の新株予約権の無償割当をしなければ、株主全体の利益を毀損する場合には例外的に、不公正な内容の新株予約権の無償割当を行うことができる。

 本件事案において、甲社は平成30724日を基準日にして新株予約権の無償割当を行うことを決定しているものの、乙社を非適格者として新株予約権を行使することができないようにさせている。そのため、甲社は不公正な内容の新株予約権の無償割当を行っているということができる。そのため、不公正な内容の新株予約権の無償割当を行うことのできる例外的な事由がなければならないが、本件事案における乙は敵対的な買収により対象会社の支配権を取得し、経営陣を入れ替え、対象会社の財産を切り売りするという会社の価値を毀損する投資手法を取ったことがあること、また、乙社代表社員Bは甲社の事業についての理解がなく、乙社が支配権を獲得し、甲社を経営したとしても後者の価値を毀損する状態にあったということができる。さらに、他の株主の意見としても、平成30625日に開催された本件株主総会に議決権の90%を有する株主が出席し、出席株主の67%の賛成によって甲社の提案が成立していることから、乙社が経営権を獲得することは、甲社株主にとっても明白であったということができる。

 そのため、例外的に乙社に不利な形で、新株予約権の無償割当を行ったとしても、会社法1091項類推適用による株主平等の原則の趣旨に反しないということができる。

 したがって、乙社は会社法2471号類推適用により、甲社新株予約権の無償割当の差し止めを請求することはできないということができる。

(2)会社法2472号類推適用により、不公正な方法による新株予約権の無償割当を差し止めることができるとされているものの、この不公正な方法というものは経営支配権を専らの目的として著しく不公正な条件による新株予約権の無償割当のことを指す。なぜなら、新株予約権の発行というものは本来会社の財産獲得のための手段であり経営支配権維持獲得を目的とするものではないからである。

 本件事案において甲と乙は甲社の支配権をめぐって対立する状況にあり、乙社は平成30331日の時点で後者送株式の20%保有する状況にあるため、乙社がこのまま株式を集めると甲社の迅速な経営判断が毀損される状況にあるということができる。

 また、甲社は新株予約権の無償割当について、乙社を非適格者とし、乙社に新株予約権を行使させないようにしているが、甲社提案の議題3の議案の概要によれば、甲社による乙社の支配権の獲得を阻止することを主たる目的とすることが掲げられており、甲社も資金調達の必要性もないのである。

 そのため、甲社は経営支配権の維持獲得を主たる目的として、著しく不公正な条件での新株予約権の無償割当を行ったということができる。

2.よって乙社は会社法2472号類推適用により、新株予約権の無償割当の差し止めを請求することができる。

設問3

1会社法4231項によれば、取締役が任務を懈怠し、会社に対して損害を与えた場合、会社は取締役に対して損害賠償請求をすることができるとされる。

 本件事案において、甲社代表取締役AP倉庫を売却する必要がないにもかかわらず、売却することによって、多数の顧客を奪われるなどした結果、多大な損害を甲社に与えていることから、Aは、P倉庫を売却してはならない義務を怠り、甲社に損害を与えたということができる。

2.ただし、高度な経営判断に関する事柄であり、判断過程にも判断内容にも不合理な点がない場合、経営判断原則により甲社取締役の任務懈怠は否定される。

 本件事案において、株主総会の決議に従い、P倉庫を売却し、会社資産を充実させるべきかという判断はQ倉庫が倒壊し、今まで使っていなかったP倉庫を使うべきといえる状況において高度な経営判断を要する事柄であるといえる。また、AP倉庫を売却すべきという判断を下しているが、これは株主がP倉庫の売却は株主が利益になると判断して可決されたものであること、不要ではあるものの、一応取締役会での相談を経たうえで、賛成多数により可決されたものであることをふまえると、P倉庫を売却すべきであるとするAの判断の過程、判断の内容には著しく不合理な点はなかったということができる。

3.したがって、Aには会社法4231項の任務懈怠はなく、損害賠償責任を負わないということができる。