司法試験民法を解きました。僕の解答は新民法に依拠して書いているのですが、果たして新民法でこのように回答しても問題なかったのかは疑問です。
気になる点があれば、コメント欄にお願いします。
設問1
1.甲建物の所有権
民法632条の請負契約が成立し、請負人が目的物を完成させた場合、目的物の所有権は、請負人から、注文者へと移転すると解されている。
本件事案において、平成29年5月10日に注文者Aと請負人Bは本件契約を締結していることから、AB間では民法632条に基づく請負契約が成立したということができる。また、請負人であるBは本件契約どおりの甲建物を平成30年6月1日に完成させている。
そのため、甲建物の所有権は、BからAに移転したということができる。
2.よって甲建物の所有権者はAである。
3.次に、CはAに対し、民法717条1項の工作物責任の追及を行おうとしているが、可能であるか検討する。
民法717条1項によれば、工作物の瑕疵によって損害が発生した場合、工作物の所有者は無過失責任を負うとされる。
本件事案において、平成30年6月7日に本権事故が発生し、Cが負傷し、Cに治療費などの損害が発生している。
このようなCの損害が発生したのは甲建物の建築資材に欠陥があり、甲建物が通常有すべき安全性を備えていなかったためであるということができる。すなわち、A所有も甲建物に瑕疵があったということができる。
4.したがってCは民法717条1項に基づきAに対して、損害賠償責任を追及することができる。
設問2
1.下線部㋐の主張について
(1)民法605条の2第1項によれば、①賃貸借の目的物の譲渡が行われ、②賃貸借の対抗要件が供えられた場合、賃貸人たる地位の移転が行われるとされ、これに基づいて目的物の譲受人は賃貸人に対して賃料を請求することができるとされている。
(2)本件事案において、平成30年2月14日にDH間での売買契約が成立していることから、民法176条に基づき、DE間の賃貸借の目的物である乙建物について、DからHへの譲渡が行われたということができる。
また、平成30年2月14日に乙建物について、本件売買契約を原因とするDからHへの所有権移転登記がされていることから、Hは民法605条の2第1項にいう賃貸借の対抗要件を備えたということができる。
(3)よってHはEに対してHE間の賃貸借契約の存在を理由として、平成30年3月以降の本件賃貸借契約に係る賃料の請求をすることができると主張する。
2.下線部㋑の主張について
(1)民法466条の6第1項によれば、将来債権についても、民法466条1項に基づく債権譲渡の意思表示があれば、将来発生することが予定される債権の譲渡人から、譲受人に債権が移転する。ただし、債権譲渡の期間が不当に長いなどの場合には民法90条の公序良俗違反を理由として将来の債権についての譲渡の効果は発生しないとされる。
(2)本件事案において、平成28年8月3日に平成28年9月分から平成40年8月分までのDのEに対する賃料債権という将来発生することが予定される債権の譲渡契約をDF間で締約していることから、DはFとの間で将来債権の譲渡契約を行ったということができる。
また、本件譲渡契約の期間は12年と、不当に長い期間ではない。
(3)よって、DF間の債権譲渡契約が成立し、FはEに対して、本件賃貸借契約に係る賃料の支払いを請求することができる。
3.㋐と㋑の優先関係
民法467条2項によれば、確定日付のある証書によって、譲渡人が債務者に通知した場合、債権譲渡を第三者にも対抗することができるとされている。また、この対抗要件の優先関係は通知の到達の先後によって決すると解されている。
本件事案においてDはEに対し、平成28年8月3日に本件譲渡契約を締結したことを内容証明郵便で通知し、翌日に到達している。一方Hは平成30年2月14日にDにより賃貸人たる地位の移転を受け平成30年2月21日に通知していることから、Fの通知に後れている。
したがって、FのEに対する賃料支払請求権がHのEに対する賃料支払請求権に優先する。
よって、下線部㋑の主張が正当であるということができる。
設問3
1.Hは本県債務引受契約は民法95条1項を理由として取り消すことを主張しているが、民法95条1項2号によれば、表意者が法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する場合で、錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである場合取り消すことができるとされている。
2.本件事案において、HはDとの間の賃料の支払いを続けることができ、それによってGに対する債務の弁済を行っていくことを予定していたのであるが、真実は、DE間の賃料債権はすでにFに譲渡され、対抗要件も備えられたことによって、Hが取得できないものとなっていた。そのため、Hが法律行為の基礎として事情についての認識が真実に反する場合に当たるということができる。
また、この事情というものは、D、G、H間の合意の基礎となっていることから、GHは本県債務引受契約の目的及び取引上の社会通念に照らし重要なものであったということができる。
3.したがって、HはGに対し、本県債務引受契約の無効を主張することができる。