平成30年司法試験予備試験 民法

平成30年司法試験予備試験民法を解いていきます。

 

司法試験・予備試験 体系別短答式過去問集 (2-1) 民法(1) 2021年

司法試験・予備試験 体系別短答式過去問集 (2-1) 民法(1) 2021年

  • 発売日: 2020/11/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 設問1

1.債務不履行に基づく損害賠償請求

 まず、AはCに対して安全配慮義務に違反したことを理由として債務不履行に基づく損害賠償請求を行うことが考えられる。

(1)民法415条1項によれば、債務不履行に基づく損害賠償請求を行うためには、債務の本誌に従った履行がされないこと、その債務不履行によって損害が発生したことが認められなければならない。

 安全配慮義務が認められるためには、相手方を保護すべき特別の関係に入ったことが認められなければならない。本件事案において、AはCとの間で何らかの契約を締約しているわけではない。しかし、CはAの使用者であるBとの間で請負契約を締約しており、Aに対して指示も出していることから、信義則上Bの従業者に対する安全配慮義務を負っていたということが認められる。そのため、CはAに対して安全配慮義務を負っていたということができる。

 また、Cは上記の通り安全配慮義務を負っていたのであるが、命綱や安全ネットを用いておらず、安全配慮義務に違反したということができる。また、これによって、Aは重傷を負ったのであるから、損害が発生したということができる。

(2)したがって、AはCに対して安全配慮義務に違反したことを理由として債務不履行に基づく損害賠償請求を行うことができると主張することが考えられる。

(3)この中でAに有利な事情としては上記のように細やかな指示を出しているという点や、CB間での請負契約があることが、安全配慮義務を認める根拠となるものの、AC間において何ら契約は締約されていないことやCB間の契約は請負契約であり、雇用契約の場合と異なりCは通常Bに対して安全配慮義務を負うものではないことからCはAに対しても安全配慮義務を負っていない可能性があることが安全配慮義務を認めるうえで不利な事情となる。

2.不法行為に基づく損害賠償請求

 AはCに対して、715条1項に基づき、不法行為に基づく損害賠償請求を行うことが考えられる。

(1)民法715条に基づいて損害賠償請求を行うためには、使用人による不法行為が発生したこと、事業の執行に関連して損害が発生したこと、ある事業のために他人を使用する者に当たることが認められなければならない。

 本件事案において、BはAの撤去作業が終了しないうちに壁面を重機で破壊すべきでなかったにもかかわらず、確認を怠り重機での破壊をはじめAを転倒させ重傷を与えたことが認められるため、BのAに対する民法709条の不法行為が成立する。

 また、解体作業のためにこのような撤去作業が行われていることから、Bの撤去作業は事業に関連したものということができる。さらに、CB間において、請負契約が成立しているものの、CはBに対して作業の内容などについて具体的指示を行っていることから、CはBを使用していたことが認められる。

(2)したがって、AはCに対して民法715条に基づき使用者責任としての不法行為に基づく損害賠償請求を行うことができると主張することが考えられる。

 (3)このように、使用者責任を認めるうえでCBは請負契約にあるとはいえ具体的な指示を行っていたことは事業のために他人を使用したことを認めるのに有利な事情となるものの、請負契約は通常役務を提供するのに具体的な指示を行わず、指示に従う義務も発生しないことから、Bを使用していたとは認められない可能性もある。

設問2

1.離婚の無効を理由とする財産分与の違法についての主張

(1)民法上離婚の要件についての規定はないものの、離婚は婚姻と同様に当事者の意思と届け出によって行うことができると解されていることから、離婚意思の存在と離婚の届け出を行ったことが認められなければならない。

 本件事案において、CとFは土地及び建物の差し押さえを免れるために離婚しているものの、離婚という法律関係を望んでいることから、離婚意思がないということはできない。さらに、離婚届も提出していることから、離婚の形式的要件も満たしている。

(2)そのため、CF間の離婚は違法であるということはできない。

2.詐害行為取り消し

(1)民法424条1項の詐害行為取り消しを主張するためには、被保全債権の存在と、保全の必要性、詐害行為の存在と、詐害意思の存在が認められなければならない。

 本件事案において、AのCに対する損害賠償請求権が存在するため、被保全債権は存在する。本件土地及び建物以外にめぼしい財産をCが有していないことから保全の必要性は認められる。また、CとFとが離婚することによって、財産分与の範囲を超えた財産分与を行っているため、詐害行為を行っているということが認められる。さらに、このような詐害行為を行ったのは詐害意思によるものであることから、民法424条1項に基づく詐害行為取り消し請求を行うことができる。

(2)このように詐害行為取り消し請求ができると考えられるものの、離婚に基づく財産分与の場合、離婚に基づく財産分与の範囲を超えた部分が詐害行為となることから、この部分の取り消しに限定されるうえ、被保全債権の保全のために必要な範囲に限定されているとされるものの、不可分な財産についての取り消しである場合その行為全体が取り消される。そのため、本件事案においては本件土地及び建物の財産分与全部が取り消される。