破棄判決の拘束力に関する問題です。
民事訴訟法判例百選にちょっとだけしか載っていないようなものなのでマイナーな論点かもしれませんが、書いていきます。
1.民事訴訟法325条3項前段によれば、上告審裁判所が破棄差戻の判決をした場合、差し戻しを受けた裁判所は口頭弁論に基づき裁判をしなければならないとされる。この口頭弁論については同項後段によれば、破棄の理由とした事実上、法律上の判断に拘束されるとされている。ただし、破棄の理由としていない事実については民事訴訟法325条3項の拘束力が発生していないため、この部分については拘束力が発生せず、差し戻しを受けた裁判所は破棄の理由としていない事実について判断することができるとされている。
2.本件事案において、上告審裁判所は民法94条2項の法意に照らし、Y2が善意の第三者に当たるかどうか判断されていないため、審理不十分を理由として破棄差戻を行っている。そのため、Y2が善意の第三者に当たるか判断しなかった点が審理夫人であるとした部分について民事訴訟法325条3項により拘束力が生じているということができる。
しかし、Y1が代理人であるが、X本人のためにすることを示さないで意思表示を行ったことという民法100条に関する問題やY2とXが対抗関係に立つかという点については上告審の判決理由中の判断になっていないことから、この点について民事訴訟法325条3項の拘束力は及ばない。
そのため、差し戻しを受けた控訴審裁判所は民法100条、177条を用いて紛争を解決することができる。
3.したがって、控訴審裁判所は民法100条、177条を適用した判決をすることは許される。