ロープラクティス民事訴訟法 発展問題4

ロープラクティス民事訴訟法の発展問題4を解いていきます。

この問題は権利能力なき社団による移転登記請求の問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.Xは権利能力なき社団であるが、Yに対して所有権に基づくAへの移転登記請求を行っている。このようなXの主張が認められるか検討する。

 権利能力なき社団民法上権利能力の主体となることはできないため、所有権に基づく移転登記請求の主体となることはできない。しかし、権利能力なき社団が任意的訴訟担当により構成員に所有権移転登記を行う場合であれば移転登記請求の主体となることはできなくとも原告適格は認められる。

 本件事案において、Xは訴状に「X上記代表者A」と記載しているが、この記載はXを原告とするものであるといえる。しかし、請求の内容はXの代表者Aへの所有権移転登記請求訴訟であるため、権利能力なき社団を登記名義人とする所有権移転登記請求ではない。

 民事訴訟法30条によれば、任意的訴訟担当により当事者能力が認められるとされる。任意的訴訟担当として適法なものといえるためには、当事者による授権があったこと、弁護士代理の原則の潜脱とならないこと、任意的訴訟担当を行う合理的必要性が認められなければならない。

 本件事案において、Xは代表者を総会の決議によってAとしていることから、AはXに対して授権を行っていたということができる。また、このように授権したのは、Xの構成員全員を訴訟の当事者としたのでは手続きが煩雑になるためであり、任意的訴訟担当を行う合理的な必要性が認められる。さらに、このように訴訟担当を行っても弁護士代理の原則を潜脱しないことからAのXへの授権は適法な任意的訴訟担当ということができる。

 したがって、XにAへの移転登記請求を行う原告適格が認められると考えられる。

2.さらに、裁判所はXの請求を理由があるものと認めていることから、Xの訴訟についてXの原告適格を認め、Aへの移転登記請求を任用することができる。

 以上