ロープラクティス民事訴訟法 基本問題11

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題11を解いていきます。

この問題は任意的訴訟担当に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法30条によれば、当事者間の契約により訴訟担当者を選定し任意的訴訟担当による訴訟追行を行うことができるとされる。

 しかし、任意的訴訟担当を行うと、民事訴訟法55条3項に規定される弁護士代理の原則や、信託法に規定される訴訟信託の禁止の原則に抵触するおそれがある。そのため、任意的訴訟担当が適法に行われるためには、当事者との間で契約が締約されただけでなく、弁護士代理の原則に違反せず、任意的訴訟担当を行う合理的必要性が認められなければならない。

(1)本件事案において、A国はBとの間で債券の発行に際してBを債券管理会社とする管理委託契約を締約している。この管理委託契約の内容として、債権管理会社は、本件債券保有者のために債券を保全するために必要な一切の裁判上または裁判外の行為をする権限及び義務を有する条項が設けられていることから、Bを本件債券保有者のための任意的訴訟担当者とする条項が存在していたということができる。さらに、本件債券を購入した者は本件債券の券面において、この条項を見ることができる状態に置かれていたことから、Bと本件債券購入者との間の売買契約において、任意的訴訟担当に関しても契約の内容となっていたことが認められる。

 そのため、Bと本件債券保有者との間で任意的訴訟担当に関する契約が締約されていたということができる。

(2)さらに、債券を発行する主体はA国であるため、債券保有者が個々に訴えを提起すると資力の問題から勝訴の見込みが少なくなることが予想される。そのため、本件債券保有者のために任意的訴訟担当を行う必要性がある。さらに、本件債券保有者というものは多数にわたることが予想されるため、A国の応訴の負担を減らすためにBが当事者となって訴訟追行を行うことが合理的であるため、Aのためにも任意的訴訟担当を行う必要性がある。

 したがって、任意的訴訟担当を行う合理的必要性がある。

(3)また、Bが訴訟担当を行っても民事訴訟法の弁護士代理の原則や信託法の訴訟信託の禁止の原則に反しない。

(4)したがって、民事訴訟法30条に基づきBが任意的訴訟担当として当事者適格を有したということができる。

2.よって、B銀行に原告適格が認められる。