ロープラクティス民事訴訟法 発展問題5

ロープラクティス民事訴訟法の発展問題5を解いていきます。

この問題は一部請求と時効完成に関するものです。民法総則の知識も必要です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民法147条1項1号によれば、裁判上の請求がされた場合には裁判上の請求が終了するまで時効は完成しないとされる。

 この時効が完成する範囲について一部請求がされている場合にはその一部部分にしか裁判上の請求の効力が生じないとされる。なぜなら、債権は可分であり、分割した場合独立して扱われるためである。そのため、原則として、残部部分は時効の完成猶予がされることはない。

 本件事案において、Xは20X5年にYに対して売掛金債権のうちの5300万円について請求しているが、この時効完成猶予の効力は売掛金債権のうちの5300万円部分についてしか生じないということが考えられる。

 しかし、残部部分について請求する意思を放棄しない特段の事情がある場合その残部部分についても時効完成猶予の意思を表示したとして民法147条1項1号に基づき時効完成猶予がされる。この請求する意思を放棄しない場合として、明治の一部請求を行った場合が含まれる。

 本件事案において、Xの第一訴訟は明示の一部請求として行われていることから、残部部分についても時効完成猶予の意思を表示したものと解される。したがって、本件売掛金債権は20X5年に第一訴訟において、明示の一部請求として裁判上の請求が行われていることから、20X5年からXのYに対する裁判が確定するまで民法147条1項1号に基づき時効が完成していないことになる。

2.Xが第二訴訟として残部請求を行ったのは、20X9年6月30日のことであり、第一訴訟が確定することなく係属していた期間である。

 そのため、Xの残部請求はこの時点で時効が完成しておらず、Xは第二訴訟を適法に提起することができる。

以上