ロープラクティス商法 問題41

ロープラクティス商法の問題41を解いていきます。

この問題は株主代表訴訟に関する問題です。株主代表訴訟として株主がどのような請求をすることができるかに注目すべき問題です。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.株主が株主代表訴訟を行うためには、会社法847条1項に基づき6か月前から引き続き株式を有する株主が株式会社に対して責任追及に関する訴えを提起するよう請求し、会社法847条3項に規定されるように会社が60日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合でなければならない。

(1)本件事案におけるXは6か月前から引き続き株式を有している株主であるかどうか不明であるものの、A社がXの請求に応じていることから、6か月前から引き続き株式を有する株主に該当するということができる。

(2)責任追及の訴えには会社の取締役に対する損害賠償請求の訴えだけでなく、会社の取引に関する請求も含まれると解されている。そのため、本件事案におけるAのYに対する工場敷地の売買代金請求に関しても会社法847条1項の責任追及の訴えに含まれる。

(3)株主は会社に対して責任追及の訴えを提起するよう請求しなければならないが、この場合の請求先というのは、監査役設置会社の場合会社法386条1項により監査役が会社を代表するため、監査役でなければならないとされる。本件事案において、XはA社監査役CではなくA社代表取締役Bに請求しているため、送付先を誤っているということができる。

 しかし、会社法386条1項により監査役に送付しなければならないとされているのは監査役が訴えの可否を判断すべきであるとされているためであるから、監査役が訴えの可否について判断した場合には送付先を誤っていたとしても会社法847条1項の株主代表訴訟を提起することができるといえる。本件事案において、確かにXは提訴請求書をA社代表取締役Bに送付しているものの、その後の取締役会において、監査役のCが出席したうえで提訴請求の可否を判断している。

 そのため、Xは責任追及の訴えを提起するよう会社に請求したということができる。

(4)また、A社は提訴請求から60日経過してもYに対して訴えを提起していないことから、会社が60日以内に訴えを提起しなかったということができる。

(5)したがって、XはYに対して株主代表訴訟を提起することができる。

2.次に、A社はXのYに対する売買代金請求権を譲渡しているが、これによって、株主代表訴訟を行うことができなくなるか検討する。

 株主代表訴訟は会社の有する権利を株主が代位行使するものであることから、会社が有する債権に限定されると解される。しかし、株主代表訴訟を避けるため会社が債権を譲渡することも考えられることから、提訴請求がされた対象の債権については債権譲渡が行われても株主代表訴訟の債権になるということができる。

 本件事案において、A社は取締役会決議を経て適法にAのYに対する売買代金請求権を譲渡しているが、これは株主代表訴訟が提起された後に行われていることから、このような債権譲渡を行っても株主代表訴訟の対象となるということができる。

 よって、A社がDに債券を譲渡したことによりXの株主代表訴訟がとはならない。

3.よって、Xの請求は認められる。

 以上