ロープラクティス民事訴訟法 基本問題33

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題33を解いていきます。

この問題は一部訴訟に関するものです。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法114条1項によれば、確定判決の既判力は主文に包含するものに限り発生するとされる。

(1)明示の一部請求を行った場合判決主文に一部請求である旨が記載されたうえで判決がなされることから、既判力は一部請求の部分に対して発生するとされる。

 本件事案において、Xは前訴で損害賠償請求額3000万円のうち500万円の支払いを求める一部請求訴訟を提起し、認容されていることから、前訴の既判力は損害額3000万円のうちの500万円の支払いを認めるという部分に発生している。

 既判力の作用する訴訟物は前訴の訴訟物と同一、先決、矛盾関係にあるものであるとされる。

 本件事案の後訴における訴訟物は前訴で認められた請求権の残額部分であることから、前訴と後訴の訴訟物は同一でないということができる。

 そのため、既判力が作用せず、Xは後訴を適法に提起することができる。

(2)明示でない一部請求を行った場合判決主文に一部請求である旨が記載されないため、既判力は債権全体に発生するとされる。

 本件事案においてXは前訴で損害賠償額3000万円のうち500万円の支払いを求めているものの、明示の一部請求を行っていないため、前訴が認容となってもXのYに対する損害賠償請求として500万円の支払いを認めるという範囲に既判力が生じる。

 既判力の作用する訴訟物は前訴の訴訟物と同一、先決、矛盾関係にあるものであるとされる。

 本件事案における後訴の訴訟物は前訴で求めた同一の損害賠償請求権であるため、同一関係にあるということができる。

 また、仮にこの後訴を認めた場合債権額について矛盾が生じるため、Xの後訴の請求は棄却される。

2.よって、以上のような違いが認められる。