ロープラクティス商法 問題42

ロープラクティス商法の問題42を解いていきます。

この問題は株主代表訴訟などの平成26年会社法改正によって新たに提起できるようになった訴訟形態に関する問題です。

わたしの使っている問題集はロープラクティス商法の第三版なので、もしかしたら問題が変わっていたり、不十分な解説しかないかもしれません。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.株式交換前に発生した原因事実に基づく責任追及についてまず検討する。

 会社法847条の2第1項によれば、株式交換の効力が生じた日から6か月前から引き続き株式を有している者は株主でなくなったとしても株式会社に対して株主代表訴訟を提起することができるとされる。株主であるといえるためには、株式交換によって、株式会社の完全親会社の株主になっているといえなければならない。

 本件事案において、XはいつからA社株主となっているか不明であるものの、提訴請求を行っていることから、株式交換が行われる6か月以上前から株主であったと考えられる。

 また、XはC社とA社との間の株式交換によりA社の完全親会社であるC社の株式を取得しているため、株式交換により完全親会社の株式を取得した株主に当たるということができる。

 さらに、A社代表取締役Yの会社法423条に基づく訴えを起こそうとしているため、責任追及の訴えに当たるということができる。

 そのため、Xは会社法847条の2第1項に基づいてA社に対して提訴請求を行うことにより、Yの責任を追及する株主代表訴訟を提起することができる。

2.株式交換後に発生した原因事実に基づく責任について検討する。

 会社法847条の3第1項によれば、6か月前から引き続き最終完全親会社の総株主の議決権の1%以上を引き続き有する株主は特定責任の訴えを多重代表訴訟により提起することができる。

 XはC社株式の11%を保有していることから、議決権の1パーセント以上の株式を保有しているということができる。また、本件廉価売買は本件株式交換後も1年半にわたり行われていることから、Xは1年半以上C社の株主であったということが考えられるため、6か月前から引き続き議決権の1%以上の株式を保有する株主であったということができる。

 会社法847条の3第1項の特定責任とは、同条3項によれば、最終完全親会社の総資産の20%以上を占める額の責任のことを指すとされる。本件事案におけるA社に発生した損害はB社が得た利益の3億円であると考えられる。C社の総資産額は40億円であることからすると、20%を下回るため、特定責任に該当するということはできない。

 したがって、Xは株式交換後の原因行為について多重代表訴訟を提起することはできない。

3.また、Xが訴訟を提起した後YはCよりA社株式を譲り受けているが、この行為がXの株主代表訴訟に影響するか検討する。

 会社法847条の2の株主代表訴訟を提起するためには完全親会社が居なければならないとされる。そのため、完全親会社が居なくなった場合、会社法847条の2に基づく株主代表訴訟は不適法なものとなると解される。

 本件事案において、C社はA社の株式1株をYに譲渡したことにより完全親会社の地位を失ったため、Xの訴えは不適法なものとして却下されると解される。

 しかし、株主代表訴訟がされたにもかかわらず株式を譲渡することは、適法に提起された株主代表訴訟の原告の適法な訴えを提起したという信頼を裏切ることになるため、この場合の株主代表訴訟は適法な訴えとして認められることになると解される。

 そのため、株主代表訴訟が提起されたのちにCはYに対してA社株式を譲渡しているが、これによってXの訴えが却下されることはないと解される。

 したがって、Cが株式を譲渡したという事実はXの訴えに影響を与えない。