ロープラクティス商法 問題46

ロープラクティス商法の問題46を解いていきます。

この問題は帳簿閲覧請求に関する問題です。この類題は平成30年司法試験に出たことがあるため、確認しておきたい問題です。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.株主は会社法125条2項1号に基づいて株主名簿の閲覧請求をすることができるとされる。

 本件事案におけるXはY社株式10%を有しているため株主であるということができる。

 これに対して、会社法125条3項1号によれば、株主が権利の確保又は行使以外の目的で請求した場合には株主名簿の閲覧請求ができないとされる。本件事案において、Xは委任状勧誘のために株主名簿閲覧請求を行っているのである。この委任状勧誘というものは議決権の行使のために行われるものであることから、権利の行使のために請求したということができる。

 よって、会社法125条3項1号の事由には該当しない。

 よって、XはYに対して株主名簿の閲覧請求を行うことができる。

2.会社法433条1項1号によれば、総株主の議決権の3%以上の株式を有している場合、理由を明らかにして帳簿閲覧請求をすることができるとされる。

 本件事案におけるXはY社の株式の11%を保有していることから、総議決権の3%以上の株式を保有しているということができる。また、Xは安定株主工作を行っているか否かの調査を行うために有価証券元帳という会計元帳の閲覧を請求していることから、理由を明らかにして帳簿閲覧請求を行ったということができる。

 これに対して、会社法433条2項3号によれば、株式会社の業務と実質的に競争関係にある場合に閲覧請求を拒むことができるとされる。このような規定がなされたのは競争関係にある他社に計算書類が閲覧された場合、会社のノウハウが他社に取られる可能性があるためである。そのため、競争関係にあるかどうかは会社のみでなく子会社についても市場と目的物の同一性が認められる場合に競争関係にあると認められる。さらに、市場を同一にするための具体的行為が行われていなくても将来市場を同一にすると考えられる場合も市場の同一性が認められる。

 本件事案におけるY社の事業は放送事業を目的とする会社であり、X社は通信販売を目的とする事業であるから、目的物は同一でないといえそうである。しかし、X社は他の放送事業を行う会社を買収したり自ら放送事業の免許を受けることにより放送事業を行おうとしているのであるから、将来放送事業を行おうとしていることが認められる。そのため、目的物の同一性が認められる。また、放送事業等物は日本全国で展開されると考えられることから、市場も同一であるということができる。

 したがって、X社とY社との間には競争関係が認められる。

 よって、Yは会社法433条2項3号に基づき有価証券元帳の閲覧請求を拒むことができる。

 以上