ロープラクティス商法 問題47
この問題は違法な剰余金分配に関する問題です。いわゆるタコ足配当という名前で知られているような気がします。
司法試験の過去問では分配可能額を算定するところまで問題となっていましたが、この問題では分配可能額がいくらなのか明示されています。分配可能額については会社法461条2項を確認してください。
1.XはYらに対して会社法462条1項に基づく責任追及を行おうとしているが、この責任追及が認められるか検討する。
会社法454条1項によれば、剰余金の配当を行うことができるとされており、会社法461条2項によって分配可能額が限定されている。会社法461条1項6号によれば、剰余金の額は分配可能額を超えてはならないとされている。この分配可能額を超えて剰余金の配当を行った場合、会社法462条に基づいて違法な剰余金の配当について金銭の支払い責任を負うとされる。
本件事案におけるX社の分配可能額は5000万円であったにもかかわらず、株主総会において、1億5000万円の剰余金の分配を決定していることから、X社は分配可能額を超えた剰余金の配当を行っているということができる。
以下、Y1~Y4が金銭の支払い責任を負うか検討する。
(1)会社法462条1項6号イによれば、分配可能額を超えた剰余金の配当を行う旨の株主総会提案を行った取締役は金銭の支払い責任を負うとされる。本件事案において、Y3がこの剰余金配当を提案したのであるから、Y3は会社法462条1項6号イに基づいて1億5000万円の金銭の支払い義務を負う。
(2)会社法462条1項柱書によれば、違法な剰余金配当に関与した取締役についても、金銭の支払い義務を負うとされる。ただし、同条2項によれば、注意を怠らなかったことを証明した場合には責任を負わないとされる。
本件事案におけるY4は違法な剰余金の配当の際の取締役会決議に賛成した取締役であるため、違法な剰余金配当に関与した取締役であるということができる。確かに、Y4は違法な剰余金の配当についての事実を知らないものの、他の取締役に対する会社法362条2項2号の監督義務を怠らなければこの事実を発見することが可能であったということができるから、会社法462条2項による面積を受けることはできない。
よって、Y4も1億5000万円についての支払い義務を負う。
(3)会社法462条1項柱書によれば、違法な剰余金の配当を受けた株主も金銭の支払い義務を負うとされる。ただし、会社法463条1項によれば、分配可能額を超えた配当であることについて善意の株主は金銭の支払い義務を負わないとされる。
本件事案において、Y1は分配可能額を超えた配当であることを知りつつ1500万円の配当を受けていることから、1500万円についてX社に返還する義務を負う。
一方Y2は分配可能額を超えた配当であることについて善意の株主であることから150万円についてX社に返還する義務を負わない。
2.よって、XはY1,Y3,Y4に対する会社法462条に基づく金銭の支払い請求を行うことができる。
以上