ロープラクティス商法 問題48

ロープラクティス商法の問題48を解いていきます。

この問題は会計監査人に対する責任追及に関する問題です。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.会社法423条1項によれば、会計監査人が任務を懈怠し、それによって会社に損害を与えた場合には損害賠償責任を負うとされる。

(1)会社法396条1項によれば、会計監査人は計算書類の監査義務を負うとされる。また、会社法397条1項により監査役に対する報告書の作成義務を負うとされる。そのため、十分な監査を行わなかった場合、あるいは不適切な報告書を作成した場合には監査義務違反、報告義務違反となるとされる。

 本件事案において、X社代表取締役粉飾決算を行っている。この粉飾決算を行うにあたって、売り上げ計上された甲市の工事すべてについて工事代金が入金されていないという不自然な点があったにもかかわらず、会計監査人であるYは工事現場に行くなどの調査義務を怠っている。また、このように粉飾決算を見落としたにもかかわらず適正監査意見を出しているため、監査役に対する報告義務を怠っているということができる。

 そのため、Yには監査義務と報告義務について違反があったということができる。

 この粉飾決算に見落としによって、X社に8億円の損害が生じていることから、Yは8億円について会社法423条1項に基づく損害賠償責任を負うということができる。

(2)会社法396条1項によれば、会計監査人は計算書類についての監査義務を負っているとされる。また、会社法397条1項によれば、取締役の法令違反行為を発見した場合には報告義務を負うとされる。

 本件事案において、X社の経理部長Bが横領行為を行いX社に2億円の損害を与えている。この際、YはBの預金通帳などのコピーの提出を求めていないものの、この預金通帳は計算書類でないため、このBの預金通帳については監査義務を負っていない。また、Bは取締役ではないため、Bに対する監査義務は負わない。

 そのため、Bが横領行為を行ったことについてYには任務懈怠がなく、会社法423条1項の責任を負わないということができる。

2.したがって、Yは会社法423条1項に基づきAの粉飾決算を見落とした点についてX社に対して損害賠償責任を負う。

 以上